第27話 レイシスタの学園生活

 レイシスタが転入してから数日。


「ふわぁ~」


 レイシスタの朝は早い。

 彼女は日の出と共に起きる。起たらすぐに制服に着替え、学園の寮から出る。


「ん~。良い朝だね」


 レイシスタは体を伸ばし、準備運動をする。


「さて、行くか」


 レイシスタは準備運動を終え、学園の周辺を走る。


「はぁ、はぁ。よし今日も好調」


 走り込みを終え、汗をぬぐう。

 続けて開けた場所まで移動し、氷魔法を発動させる。


「あー、涼しー」


 レイシスタは氷魔法による冷気で涼む。


「さてと、やるか」


 レイシスタは深呼吸をし、目を瞑る。そして自分の内側の魔力に集中する。


「【クリエイト・アイス】」


 レイシスタは魔法により氷の弓を作る。続けて氷の矢と、的を作る。

 氷の矢を手に取り、弓を引く。そして次々と的を破壊していく。

 一矢も外すことなく、全ての的を破壊し終える。


「ふぅー。こんなものか」


 レイシスタは全ての矢と的の氷を消し、寮に戻った。


 _______


 寮に戻ったレイシスタは朝食を食べて校舎に向かう。


「おはようシスタ」


「おはようニーナ」


 教室に入ってレイシスタとフェルニーナは挨拶をする。


「今日もあなたは元気ね」


「ニーナだって昔より笑顔が増えたよね」


「そうかしら?」


 二人が話していると、ディルが教室に入ってくる。


「お、舎弟くん。おはよー!」


「おはようディルくん」


「お二人ともおはようございます。兄貴は、まだ来ていませんか」


 ディルは教室内を見回してため息を吐く。


「残念ながらね。まぁいつものことでしょう」


「そうですね。では、いつも通り待つとしましょう」


 ディルはタオルを取り出し、キリヤの椅子や机を磨く。


「いやー、毎度思うけど舎弟くんの忠誠心凄いよね」


「まったくね。ちょっと呆れるくらいだわ」


 二人が苦笑いしながらディルを見ていると、教室内に剣を持った生徒、キリヤが入ってくる。


「よし、間に合ったな」


 キリヤは汗を拭いながら席に着く。


「おはようございます兄貴!」


「キリヤくんおはよう」


「おはよー、キリヤ」


「あぁ、みんなおはよう」


 キリヤが席に着き挨拶を交わすと、すぐにチャイムが鳴った。




 _________


 生徒たちは教室内にて魔法の授業を受ける。


「今日は調合の授業を行います。二人一組になってください」


 教師の言葉に生徒たちは二人一組を組み始める。


「では兄貴は俺と」


「待ちなさい。ディルくんは前組んだでしょ。私が一緒にやるわ」


「えー、私もキリヤとやりたいな」


「落ち着けよお前ら。さっさと決めないと授業が進むぞ」


 キリヤの言葉に三人は頷きあう。


「「「じゃんけん、ポン!」」」


 公正なるじゃんけんの結果、レイシスタがキリヤと組むことになった。


「よろしくねキリヤ」


「あぁよろしく頼む」


「仕方ないわね。ディルくん、私と組みましょう」


「そうですね。フロール嬢、兄貴をよろしくお願いします」


 こうして二人一組を組みわ終わり授業が始まる。


「では早速始めていきます。まずは調合台に魔力を通して……」


 教師の指示のもと授業が進んで行く。


「よし。順調だね」


「あぁ、悪いな。ほとんど任せて」


 キリヤが魔力を使えないので、調合で必要な魔法や魔力を使う過程を全てレイシスタが行っている。


「いいよいいよ。どんどん頼って!」


 レイシスタは笑いながら作業を進める。


「では次に火をかけてください」


 教師の言葉に、レイシスタの手が止まる。


「……火かぁ」


「苦手なのか火の魔法?」


「うん、何というか家系的にね。私の家系、氷系統の魔法は得意だけど反対に炎系統の魔法は全くと言っていいほどダメなんだ」


「なるほど。けど確かお前の実家って雪原地帯なんだよな、火が使えなくて大丈夫なのか?」


「まぁ完全に使えない訳じゃないし。それに家にはお手伝いさんとか狩人とか、頼れる人がいるからね」


「なるほどな。それじゃあ今回はこいつを頼ろう。『不死鳥フェニックス』」


 キリヤの呼びかけに答え、不死鳥が現れる。


「火をつけてくれ」


 不死鳥は主の頼みにどこか呆れたような仕草をしながら火をつける。


「ありがとな」


「ありがとう、不死鳥。けど火をつけるためだけにフレイナ家の魔剣を使うなんてね」


「使え者は何でも使う。それが俺のモットーだからな」


「魔法の代わりに魔剣を使ってるキリヤが言うと説得力があるね」


 二人は話しながら、授業を進めた。



 __________


 授業がすべて終わった。放課後、生徒たちは魔法や魔道具の研究をする者、寮に戻り休む者、街に出て買い物や食事を楽しむ者と様々だ。

 そんな中で、レイシスタは訓練場を借りて魔法の特訓をしている。


「……ふぅ~、とりあえず準備運動はいいかな」


 レイシスタは氷の弓を降ろし、魔力を集中させる。


「おいで、【氷狼フェンリル】」


 その瞬間、訓練場が強烈な冷気に包まれる。そして冷気の中から白く巨大な狼が現れる。


「いくよ。【アイス・アロー】」


 レイシスタは氷の矢を氷狼に向かって放つ。氷狼は向かってくる矢を避けながら、レイシスタに近づく。


「【アイス・ウォール】」


 レイシスタは足元に氷の壁を作り出し、高い場所から氷狼を狙う。


「【アイス・マルチアロー】」


 大量の氷の矢を氷狼に向けて放つ。

 だが氷狼は氷の矢をかみ砕きながら進み、レイシスタの足場を壊す。


「いいね。さすが私の【氷狼】だね」


 足場が崩れ、落ちるレイシスタを氷狼が背に乗せて地面に降りる。


「ふぅ~。ありがとう」


 レイシスタは氷狼から降りる。


「よう。お疲れ様」


「あれ?キリヤ、どうしたの?」


 キリヤは訓練場に入ってくる。


「帰ってる途中でお前がここに入ってくるのを見かけてな、気になったから見てた」


「見てたんだ。声かけてくれればよかったのに」


「悪い悪い。……毎日やってるのか?」


「訓練場を借りれる日はね。【氷狼】を使える場所は限られてるから」


「なるほど。随分と努力してるんだな」


「まぁね。これでも【氷帝】候補だから。頑張らないと」


「そうか。……なぁ、せっかくなら相手がいた方が良くないか?」


「確かに相手がいればいいけど。……え、もしかして?」


「俺が相手になるよ。俺も強くなる必要があるからな」


 キリヤは剣を抜き、レイシスタに向ける。


「いいね。いくよ、【氷狼】」


 レイシスタは氷狼の後ろで氷の弓を構える。


 この日以降、二人は頻繁に模擬戦をするようになった。






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