第24話 【炎帝】候補と【氷帝】候補


 キリヤとレイシスタは手合わせを終え、他の生徒たちが授業をする中、隅の方で休んでいる。


「いやー。キリヤすごいね。負けたよ」


「レイシスタもあの氷狼はすごかったぞ。斬魔でも簡単には切れなかったからな」


 キリヤとレイシスタは互いに先ほどの手合わせに関して話している。


「さすがの私もまさか魔剣を何本も出されるとは思ってなかったよ。いったい何本の魔剣を使ったの?」


 レイシスタの疑問にキリヤは戦闘を思い出しながら数える。


「まずいくつもの魔法を切ったのが『斬魔』、そしてレイシスタも知っての通りフレイナの家に伝わるっていう炎の魔剣『不死鳥』、地面の下からフェンリルを縛ったのが『蛇腹』、最後の氷の壁を乗り越えたのと高速移動に使ったのが『風魔』」


 こんなところだなとキリヤは指を折り終える。


「いざ聞くと本当にいくつもの魔剣を使ってるんだね……。ところでフェンリルを倒す前に『不死鳥』を使ったのに【アイス・ウォール】が壊されなかったのはどうしてかな?」


「それは単純だ、そのアイス・ウォールでお前の視界から俺が消えた瞬間に不死鳥を消したんだ。それで風魔を使って壁を超えるって方法でアイス・ウォールを突破でフェンリルを切り刻んだわけだな」


「なるほど。確かにアイス・ウォールは視界が塞がれるからなぁ。あの状況でとっさにそんな判断が出来るなんてすごいね」


「これでも結構戦ってきてるからな。とっさの判断には多少自信がある」


「どうりで戦い慣れてると思ったよ」


「それを言うならレイシスタもかなり戦い慣れてる気がしたんだが?」


「お、分かる?私の地元は雪原地帯でね、食料確保のために動物や魔物を狩っていたからね」


「狩りか。もしかしてそれで弓を?」


「そうそう。魔法が苦手な人は狩りをするために弓を使ってるんだ。私は魔法は使えたけど魔力が切れたりいざという時に魔法に頼らなくても戦えるように弓も習ったんだ」


「じゃあ普通の弓も使えるわけか。それなら学園襲撃でも戦えたな」


「魔法が使えなくなったんだっけ?確かに私ならその状態でも戦えたね」


「別にレイシスタなら魔法も使えたと思わよ?」


 二人の会話に模擬戦を終えたフレイナが口をはさむ。


「お、ニーナ。ひさしぶりだね」


「そうねひさしぶり、シスタ」


 レイシスタは座ったまま軽く手を上げ、フェルニーナは立った状態で挨拶を交わす。


「シスタ?」


「私のあだ名だよ。レイシスタだからシスタ。私もフェルニーナのことニーナって呼んでるでしょ?」


「なるほど。二人とも仲が良いんだな」


「幼馴染だからね。ニーナとはよく一緒に遊んだよね」


「あなたは自由奔放で、よく泥だらけになって、私がどれだけ叱られたか」


「あはは。懐かしいなぁー。でもニーナは【炎帝】の魔法を習得するからって遊べなくなった」


「それは、『不死鳥』を探すために私もあちこちに連れまわされたから……」


「分かってる分かってる。けどその『不死鳥』はキリヤが持ってるよね?」


「えぇ。『不死鳥』が彼を選んだらしいわ。だから私にはどうしようもない」


「じゃあ【炎帝】はどうするの?」


「大丈夫よ。私だって、昔のままじゃない。自分の力で【炎帝】を継ぐわよ」


「へぇー、じゃあニーナ。私と模擬戦、しようよ。久々にニーナとやりたいな」


「……いいわよ。下手な人相手だと手加減も出来なかったけど、シスタなら思う存分試せるわ」


「お、言うね。じゃあ早速やろっか」


【炎帝】候補と【氷帝】候補の模擬戦が決定した。



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