第23話 魔剣士VS【氷帝】候補
「ちょっとキリヤくん。どういうつもり?」
手合わせ前の準備運動中、キリヤの元にフレイナとディルが近づく。
「どういうつもりってどういうことだ?」
「どういうことって。どうしてあの子と手合わせなんてするのって言っているのよ」
フレイナはレイシスタを指さす。
「どうしてと言ってもな。さっきレイシスタが言ってた通りだ。ここに来るまでに仲良くなって手合わせをしたくなっただけだ」
「仲良くって……。まぁいいわ、とりあえず後で話をちゃんと聞かせてもらうからね!」
フレイナはあきれながら元いた位置に戻る。
「兄貴、わかっているとは思いますが相手は魔帝候補。フレイナ嬢と同等の力を持っています。特にフロール家の氷魔法は強力です。気をつけてください」
「あぁ、わかってる。っとそろそろ始めるみたいだ」
「はい。頑張ってください、兄貴」
キリヤは剣を撫でながらレイシスタの元に歩く。
「準備はいいのかな?さっきまでニーナと話してみたいだけど?」
「ニーナ?……あぁ、フレイナのことか」
フェルニーナ=フレイナを略してレイシスタはニーナと呼んでいるらしい。
「そうか、魔帝候補同士だしお前ら知り合いなのか」
キリヤはフレイナの方を見ると、腕を組んでキリヤたちを見ている姿がある。
「まぁね。ニーナとは昔からパーティや式典とかでよく会って話したりする仲なんだ」
二人とも魔帝候補、貴族である故にそういった場所には昔からよく参加していたらしい。そんな場所にいる数少ない同年代ということで仲が良いのだろう。
「さて、話もこの辺でそろそろ始めようか。準備はいい?」
「あぁ、始めよう」
キリヤとレイシスタは互いに距離を取る。
そして二人の様子を確認し、教師が上に手を向ける。
「では、……開始!」
教師の手から魔法が放たれ開幕の合図と同時に、キリヤは斬魔を構えレイシスタは魔法を発動させ氷の弓を手にする。
レイシスタは早速キリヤに向けて氷の弓を構え向ける。
「いくよ、キリヤ!【アイス・アロー】」
レイシスタの弓から一瞬にして氷の矢が出現し、キリヤに向かって高速で飛ぶ。
「っ!『斬魔』」
キリヤは氷の矢が当たるギリギリで斬魔で矢を切り砕く。
「……速いな。それにわざわざ弓を作るとは」
弓は剣と同じく今ではそうそう使われなくなった物。
いくら魔法で作り出したとはいえ今時弓を使う者は稀である。
「あぁ、これね。これはね………」
「魔法のイメージ増強のためね」
レイシスタの言葉を奪ったのはフェルニーナ=フレイナ。
「どういうことでしょうか。フレイナ嬢?」
「本来、魔法というものは魔力そしてなによりイメージを使って形成するもの」
フレイナが炎を鳥の形にしたりするのもイメージを形にして威力を上げるためだ。
また、自分の得意な属性を持っているのも「その属性なら負けない」という強いイメージを持つことで魔法の威力が上がるからだ。
「シスタ、………レイシスタは住んでる場所と生活の影響で弓を使うことによって魔法の速度と威力を上げているの」
フレイナは解説を終え、キリヤとレイシスタの戦いに意識を戻す。
「あーあ。全部ニーナに言われちゃったね。まぁニーナの言う通り私はこれまでの生活から魔法でも弓を使うようになってね。でもあくまで魔法、こうゆうのもあるよ!」
レイシスタはキリヤに向けて弓を引き構えるとレイシスタの周りに複数の魔法陣が現れる。
「撃て!【アイス・マルチアロー】」
レイシスタが弓を放つとともに複数の魔法陣から氷の矢が放たれる。
そんな無数の攻撃を前に、キリヤは魔法陣が展開された瞬間から抜いていた
「さすがにこれはきついな。燃やし尽くせ『不死鳥』」
キリヤが不死鳥を振り現れた炎の鳥が氷の矢をすべて燃やし尽くす。
「へぇ。それって確かニーナ、フレイナ家の魔剣だよね?今は使い手が居ないって聞いてたけど……」
レイシスタは一瞬フレイナを見る。
「ニーナが知らないはずは無いし。君、ニーナに選ばれたんだね」
「いや、フレイナがというより
そんな軽口をたたきあいつつ、レイシスタは再び弓を構える。
「なんにしても、その力は厄介だね。【アイス・マルチアロー】」
レイシスタは大量の氷の矢を放つ。
だがキリヤはそれを見ると共に片手に斬魔を片手に炎を纏わせた不死鳥を構え、レイシスタに向かって走り出す。
「俺は同じ攻撃を二度も受けるつもりはないぞ!」
キリヤは余裕の表情で二本の魔剣を振るい、氷の矢を破壊しながらレイシスタに近づいていく。
そして剣がレイシスタに当たる距離まで近づく。
「これで終わりだ!」
キリヤがとどめに剣を振るおうとした瞬間、
「残念。まだだよ、【アイス・ウォール】」
レシスタが魔法を発動させると、氷の壁が出現する。
レイシスタを持ち上げるように足元から。
「それでうまく逃げたつもりか?『斬魔』」
キリヤは氷の壁を斬魔により切り裂き、破壊する。
それにより壁の上に居たレイシスタは足場を失い落下するように落ちる。
だがレイシスタは焦ることなく落下しながらもキリヤに向け弓を構える。
「そうくると思ってたよ。【フリージング・マルチアロー】」
レイシスタは落下しながら無数の氷の矢を放つ。
そんな氷の矢をキリヤは先ほどと同様に二本の魔剣で防ぐ。
だが、
「!?足が、凍らされてる…」
キリヤの足元には、いくつもの氷の矢が刺さっており、そこを起点として一面が凍っている。
「当たりそうになったものだけ壊したのがあだになったか」
キリヤは瞬時に状況を理解すると二本の魔剣を足元に突き刺し凍った足と地面を溶かす。
そんなわずかな間にレイシスタは地面に降り立ち、膨大な魔力を貯める。
「さて、どうやら君にはそこそこの魔法じゃ傷一つつかないらしい。だから私の最高の魔法で相手をしよう。いくよ!【
レイシスタがその魔法を発動させた瞬間、訓練場の中全体が強大な冷気に包まれる。
「寒っ!」
「なんだこの寒さ!?」
「この寒さと魔力量は……」
「あの子、やる気ね」
その冷気によりクラスメイトたちは寒さに体を震わせる。
だがこの魔法の本質はそんなものではない。
あたりが冷気で完全に包まれると、冷気の中から白く巨大な狼が現れる。
「なるほど。それが氷帝の魔法ってことか」
「その通り。この子が氷帝、フロール家の魔法【
レイシスタの言葉と共に氷狼がキリヤに襲い掛かる。
「燃え盛れ。『
キリヤは不死鳥を振るい、出現した炎の鳥が氷狼に襲い掛かる。
そのまま不死鳥と氷狼がぶつかると思われた瞬間、
「さすがにそのまま衝突させるわけにはいかないな。【アイス・ウォール】」
レイシスタが二つの間に氷の壁を作り出す。
だがそんなもので止まるほど不死鳥はやわではない。
「突っ込め!不死鳥」
不死鳥はキリヤの言葉通り氷の壁に突っ込み破壊する。
それにより砕けた氷の壁の残骸が散らばる。
「君ならそうくると思ってたよ。氷狼、氷を喰らえ!」
レイシスタが命じると氷狼は砕けた氷の壁の残骸を吸収し、冷気を強める。
そんな不死鳥と氷狼は互いを倒そうと衝突する。
「いけ!不死鳥!」
「喰らえ、氷狼!」
不死鳥と氷狼は接戦する、かと思ったが。
「不死鳥が押し負けてる……」
本来の二体の力は、どちらも魔帝に関連するものなのでそこまで変わらない。
にもかかわらず不死鳥が押し負けてるのは氷の壁を破壊するのに少しの力を使ったのと、氷狼が氷を取り込み強化したから。
そのわずかな差がこの結果を生み出している。
そしてついに、
「氷狼!」
氷狼が不死鳥を破り、そのままキリヤに向かって行く。
「『斬魔』」
キリヤはすぐさま斬魔で氷狼に対応するが、
「斬れない?」
氷狼の魔力の濃さと強さによりいつものように斬ることができなく、お仕留める程度になっている。
そしてそんな隙だらけの状態を逃すレイシスタではない。
「【アイス・マルチアロー】」
レイシスタはキリヤに向かって無数の氷の矢を放つ。
「っ、さすがにやばっ!?」
キリヤは氷の矢を避けようと氷狼から距離を取るが、氷狼と氷の矢の二つを対応するのはさすがに難しくいくつかの氷の矢が身体にかすり傷を負う。
だが距離をとることには成功し、氷狼も一度レイシスタの元に戻り互いに体制を立て直す。
「まさか今のでも決めきれないなんてね。でもそろそろ君も疲れてきてるでしょ?」
「そういうレイシスタもそれだけ魔法を使えばそろそろ魔力が枯渇してきたんじゃないか?」
互いに軽口をたたきあいながら、レイシスタは魔力を集中させキリヤは不死鳥により傷を癒す。
そうして体制を整えるといよいよ決着に向け互いに武器を構える。
「燃えろ。『不死鳥』」
先手を打ったのはキリヤ。
キリヤは不死鳥の刀身を燃やし剣を振る。
「【アイス・ウォール】」
レイシスタはそれに素早く反応し氷狼と自分を守るように氷の壁を作り出す。
そして先ほどと同様に壁が壊された瞬間に勝負を決めようと用意をしているが、
「………壁が破壊されない?」
いつまでたっても壁が破壊されることはなく、それどころか不死鳥の熱すら感じることは無い。
そんな状況を不思議に思っていると、突然氷狼の真下の地面から複数の何かが現れる。
「下から!?あれは刀身?」
レイシスタが驚いている瞬間にも、現れた複数の刀身が氷狼を拘束する。
だがそれだけでは終わらない。
「『風魔』」
次はキリヤ自身が、片手に風を纏った剣である風魔を持ちながら氷の壁の上から現れる。
「いくぞレイシスタ!『風魔』『斬魔』」
キリヤは風魔の風に乗り高速で斬魔を振るい氷狼を何度も切り裂いていく。
いくら氷帝の魔法でも拘束された状態で何度も切られれば無事ではいられない。
何度も巻き起こる剣撃により氷狼は倒された。
「さて、これで氷狼は倒せたがまだやるかレイシスタ?」
行き成り起こった怒涛の出来事にあっけにとられながらも、レイシスタは自分の最高魔法が敗れたことを理解し、弓を下げ。
「いや、降参だ。君の勝ちだよ」
負けを認めたのだった。
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