第22話 氷の転入生

 キリヤとレイシスタの二人は馬車の中にて学園に着くまでの間おしゃべりをしていた。


「なるほど。学園襲撃。聞いてはいたけどなかなかハードな学園だね」


「まったくだ。特に俺は魔法が使えないせいでかなり苦労してる」


「君それでよく魔法学園に受かったね」


「世の中魔法が全てじゃないってことだ。そういえば道案内してないけどいいのか?」


 そんなキリヤの言葉にレイシスタは一瞬ぽかんっとしながらも笑いながら答える。


「君はまじめだね。道案内してほしいっていうのは嘘だよ。君を馬車に乗せた理由は暇をつぶす相手が欲しかったから。だから君はこうして私と話をしてくれればいいんだよ」


 レイシスタは「君を気に入ったからって理由もあるけどね」といたずらめいて付け足す。


「それはありがたいが。だが俺の話はほとんど終わったからな。次はフロールの話をしてくれよ」


「それはいいけど。あぁ、あと私のことはレイシスタと呼んでくれて構わないよ」


「それじゃあレイシスタはなんでこんな中途半端な時期に魔法学園に転入してきたんだ?」


 キリヤの言葉にレイシスタは少し悩みながら口を開く。


「実は転入って表現は少し違うんだよね。もともと私はこの学園に来るのは決まってたんだ。ただ家の親が心配症でね。さっき君も言っていたけど学園襲撃なんてわざわざ危険なことがある時期に行く必要はないって言われて入学する時期をずらしたんだ」


「それは随分と過保護な親なんだな。でもレイシスタは【氷帝】候補なんだろ?」


 キリヤの指摘に、レイシスタは目線を落としながら、笑って答える。


「そうなんだよね。だから一応強いよ。地元ではあんまり人と戦う機会は無かったけどね」


「へぇ~、そいつは一度、手合わせしてみたいな」


「なるほど手合わせか。いいね……」


 そうして二人は学園に着いたのだった。










 _____________________

(学園内)


「結局キリヤくんは来なかったわね」


「はい。もう授業も始まりますし。今日はお休みでしょうか」


 二人を含めたクラスメイトは、今日最初の授業である実戦のため訓練場に来ている。二人はキリヤが来ないことを心配していると担任の教師が訓練場に入ってくる。


「あー。みんな先日の学園襲撃ご苦労だったな。で、早速授業を始めたいがそのまえに転入生を紹介する」


 教師の言葉と共に水色のショートカットの髪を揺らす美少女と、腰に剣を携えた男が入ってくる。


「兄貴!?」


「キリヤくん?とあの子は……」


 転入生紹介のはずなのに訓練場に入ってきたキリヤに二人は驚きつつも、フレイナは転入生のほうであるレイシスタの方に目を向ける。


 そんな生徒たちがざわつく中、レイシスタが前に出て話を始める。


「みんな初めまして。私は次期氷の魔帝『氷帝』候補。レイシスタ=フロール。そしてこっちはここに来るまでに仲良くなったキリヤ」


 レイシスタの紹介とともにキリヤは苦笑いしながら手は見知った顔の生徒たちに手を振る。


「早速だけど、今から私のことを知ってもらうために彼と手合わせをしたいんだけど……」


 レイシスタが担任に目を向けると、担任はため息をつきながら


「好きにしろ」


 と返す。


「じゃあ先生の許可も取れたし、始めようか」


 レイシスタの言葉で、自己紹介という名の手合わせが行われることになった。






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