第13話 学園襲撃

 ソロモンの指輪


 それは世界に10個しかない指輪であり、その力はどんなに強い魔力でも操ることができるというもの。


 そんな指輪の一つは王立魔法学園のある王国の王族が管理している。


 その指輪を手に入れようと思うと、王族の信頼を勝ち得て王族から直接貰うことが一番の近道だ。


 そんな王族の信頼を勝ち得やすいのは、魔法騎士団。


 魔法の使えないキリヤが騎士団に入るには学園をトップの成績で卒業する必要がある。


 これこそが、キリヤがこの学園に来た理由だ。



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「なるほど。そういうことですか」


 ディルが納得していると、いきなり校内放送が流れる。


[これより、2年生が帝国へ遠征に出かけます]


 そんな放送が流れ、多くの生徒たちがざわつきだす。


「遠征?」


 ただキリヤは、何の放送か分からず首をかしげている。


「遠征って言うのは2年生の行事の一つなの。2年生が帝国の魔法学園に行って共同授業を受けるの」


「なるほど?でも、なんで他の奴らはざわついてるんだ?」


 キリヤは聞くが、フレイナも首をかしげる。


「それは、俺が説明しますよ!ほとんどフレイナ嬢に説明を取られましたが、あとは俺に説明させてもらいます」


 ディルは嬉々と説明しだす。


「実は現在、3年生が職業体験で学校に居ないんです。そんな中で2年生まで居なくなり、2,3年生の教職員はそれぞれの行事や休みを取ってこの学園に居るのは俺たち1年生と数人の教職員だけです」


「それくらいなら私も知ってるけど?」


 フレイナの言葉にディルは笑いだす。


「もちろん、それだけではありません。ポイントは入学して間もない1年生と数人の教師しか学園に居ないことです。これはつまり、この学園を襲うのに絶好の機会であるということ!」


「襲う、って誰が?」


「それは、反魔法主義組織ですよ!」



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 昼休みが終わり、キリヤたちは教室にて授業(自習)を受けることになった。


「で、先ほどの話の続きですが」


「それは良いが、いくら教師が居ないとはいえ、話してて良いのか?」


 キリヤたちは今、教師が居ない中で課題のプリントをやっている。


「大丈夫ですよ。そもそもこの自習はそういう話し合いの場でもありますから。この課題だって、わざわざ簡単な物を用意してくれた訳ですし」


 ディルはすでに終わった課題をキリヤに見せる。


「……俺にとっては厄介な課題なんだが」


「あら、キリヤくん。座学は苦手なのね」


 キリヤの横に座っていたフレイナが、「どこが分からないの?」とキリヤに近づく。


「ここなんだが……」


「ああ、これはね。こうして……」


「なるほど。じゃあこっちは?」


 と、キリヤはフレイナに教えてもらい課題を進めていく。

 だが、その光景を見て愚痴をこぼすのが一人。


「フレイナ嬢。なぜ兄貴の隣に?前まで別の席でしたよね」


「別にいいでしょう?席が決まってるわけでは無いし」


「それは、そうですが……」


 ディルは忌々しそうにフレイナを見る。


「よし!終わった!ありがとなフレイナ」


「ええ。どういたしまして」


 そんなやり取りを見て、もはやディルは見るにとどまらず睨んでいる。


「それで、ディル。さっきの話続きは?」


「え?あ、はい!」


 そんなディルはキリヤの言葉により一瞬にして顔色を明るくする。


「話の続きですが。この学園は毎年、この時期に反魔法主義組織に襲われます。そして教師たちはこれを一つの行事として、とらえているんです」


「行事か。でも本当の行事では無いし、命の危険もあるよな?」


「ええ、教師は本当にギリギリまで手を出さないらしいですからね」


 ディルが話している途中でフレイナが話に入る。


「へぇ~。ディルくんよく知ってるのね」


「誰が、ディルくんですか…。まぁ兄貴には言ったことがありましたが、俺にはこの学園に通っていた兄がいますので」


 そんな会話をしていると、不意にピーンポーンパーンポーンと放送が鳴る。


[この学園に侵入者が現れました。生徒の皆さんは自分の身は自分で守りましょう]


 と、さすが実力主義という放送が流れる。


「これがディルくんが言って反魔法主義組織の襲撃ね」


「さっそくでしたね。兄貴、どうしましょうか?」


 フレイナとディルの視線を受け、キリヤは出入口を睨み、


「まずは、ここに来る奴を潰す!」


 剣を撫でて口角を上げた。










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