第22話 魔女が結婚??

実は、ヨキは、結婚を約束し、その準備まではしたことがあった。

それは、ツヨシとお別れをした後で、こうちゃんと出会う前だ。


その頃、音羽とヨキは、あまり会っていなかった。

だから、音羽は、SNSで、ヨキがどうやら結婚するらしい、ということを知った。


写真の中でヨキは婚約者と一緒に笑顔で写っていたし、周りから祝福されて、幸せそうな様子がうかがえた。


音羽は、すごく意外だと思った。

何か違和感すら感じていた。

けれど、幸せそうに笑っているヨキの姿をSNSで見た。

ヨキは、常々、自由でいることが大切だから、結婚はする気がないと言っていた。


でも、その頃から、少しずつヨキは体調を崩していた。

弱ると誰かに支えて欲しいと少しは思うのかもしれない、と音羽は思った。

それは、人である限り、当たり前のことだし、どんなにすごい人でも、強い人でも、パートナーはいるに越したことはない。


音羽自身も、独身の頃は、結婚は、自由の翼がもがれるものと思っていたから、結婚願望ゼロだったけれど、結婚したいと思えるパートナーの登場と、子どもを身篭ったときの深く広い愛を知り、結婚は、自由を奪うものではなく、また違う幸せを運んでくれたものとなった。


きっと、ヨキにも転機があったのだろう、と勝手に納得する音羽だった。


それから2〜3ヶ月後に、音羽は久しぶりにヨキに会うことになった。


「ヨキ、結婚おめでとう。ビックリしたけど、幸せそうで、わたしも嬉しい。

引っ越しも済んだみたいだね。」


「それがさ、、、、、結婚、、、やめることにした、、

実家を出て、新居に2人で住み出して、初めて知ったことがいくつかあったの。

一つは、婚約者の澤田くん、ものすごく優しくて良い人なんだけど、実はADHDで、感情がコントロール出来ないと、壁に穴があくの。

ADHDであることは、全然いいの。

でも、そのこと、一度も話してくれたことないのが問題。

これから、一生を共にするっていう相手に、隠してたってことがね。

それに気がつかないわたしも問題よね。

相手のことちゃんと見てないのに、結婚とかって、、、

あと、極め付けが、そのお母さんが、信仰宗教の信者で、そのお札を魔除けのためにって、バンバン送ってくるの。

わたしの実家にまで送って来て、ママがビックリして、どういうこと?って、、、

それで、詳しい話を聞きに来るって、ママがうちまで来たら、壁に穴空いてるから、またビックリしてた。

うちって、歴代受け継いでる事業もあって、守らないといけない財産もあるから、そんな信仰宗教にどっぷりの家と縁を結ぶことはありえない!って激怒して、

結婚やめなさい!って、なってさ、、、」


「そもそも、どうして結婚とかになったの?」


「うん、、、わたしも30代になって、事業も安定して来たし、人並みに落ち着きたいな、って。

結婚するのも悪くないって初めて思った。


それと、、、彼ね、わたしの会社のイベントスタッフだったんだけど、、あるイベントの後に、他のスタッフまで巻き込んで、人前プロポーズだったのもある、、、

流れに沿ってみるのもいいのかもって、その時は思っちゃって。


実は、本心を言うと、実家を出るいいきっかけにもなるなって思ったの。

わたしとママって、関係が特別濃いのよね。

パパとママが離婚してるから、シングルマザーと、一人っ子ってこともあるけど、、、、

もの心ついた時から、わたし、ずっと、ママを助けなきゃって思って生きてるの。

10代で家を出て、ずっと外国にいて離れてた時は、ある意味ホッとするというか、いい距離感なのよね。

でも日本に帰ってきて、実家に戻ってからは、家を出る理由が無くって、、、、わたしのオフィスも近いから。


要するに、流れに沿って、結婚の準備を進めていったけど、結婚自体は、ダメになって、で、念願の一人暮らしになったわけ。


それに、そんな結婚は、澤田くんにも失礼だから、よかったと思う。


あの人、ほんと、純粋でいい人だから、わたしじゃなくって、もっと彼に相応しい人ときっと出会うと思う。


彼のお母さんが送ってきた、魔除けのお札のせいで、わたしが払えたのかもね。」

と言いながら、ヨキは苦笑いしていた。


音羽は、その時は、ヨキが魔女とは知らなかったから、ちょっとしたジョークだと思っていた。


今となって、ヨキの正体を知っている音羽は、あの時のことを思い出して、

「魔除け、魔女よけか、、、そのお札効いたのかもね。」

と、苦笑いするしか無かった。


お札のことはさておき、絶対に想いは叶う。

本音で思っていること、潜在意識にある想いは、ちゃんと宇宙が、それを叶える。

その方法は、宇宙に任せて仕舞えば、どうやってでも、その結果になる。

それが、この宇宙のシステムだから。


ヨキは、ママと少し距離を置いて、見守りたかった。

距離を置いて、ママの想いを自分が叶えたい。

それがヨキの母を大切にするやり方だ。

だから、実家を出たかった。

これが、ヨキの潜在意識に、しっかり存在する想いだ。

だから、それを叶えるために、宇宙が、ヨキを少し遠回りさせたのが、ヨキの結婚話だった、というわけだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る