第20話 魔女の生き方

魔女たちは、自然からの恩恵を受けて生きている。


よく、ヨキは言う。

「わたしたち、魔女は、身一つでは、何も出来ないのよね。

植物、ハーブ、エッセンシャルオイル、水、塩、ロウソク、それから木の杖、、、、

霊媒や、ヒーラーの人で、身一つで色々出来る人は、すごいと思うわ。羨ましい。」


魔女クラスで、学習することの中で、最もボリュームが大きいのが、ハーブなどの植物の知識だ。

そして、難解なのが、天体の学習。

宇宙、星、月のことを分からずして、例えば、どうやってタロットカードを引けるのか、引いたとしても、メッセージを届けるには不十分だとヨキは言う。


また、魔女というだけあって、女性性のエネルギーを力としている。

だから魔女クラスでは、女性の身体、子宮や卵巣、月経について、詳しく学ぶ。

女性の身体は、毎月の月桂や排卵があることで、運命の輪、つまりは、破壊、浄化、覚醒、統合を毎月その身体で体現している。

なんとも神秘的だ。


ヨキの一日は、こんな感じだ。


何時に寝ようと、朝5:00に起きる。


まずは、命の源、水を飲む。


その後、グランディングを10秒でやってしまう。

グランディングとは、地球のコアとつながりそのエネルギーを自分に集めて、それをまた、宇宙に向かって放つという瞑想だ。


その後は、アフォアメーションだ。

このことについては、また後ほど説明しよう。


そして、ジョギングを約10キロする。

帰ってきたら、飼っているワンちゃんを散歩に小一時間連れて行く。


お風呂に入って、朝ごはんを食べたら、仕事に出かける。

いつもワンちゃんは連れて出るので、仕事の合間にオフィスの近くの森に散歩に行く。


夜まで仕事をして、帰って来たら、お楽しみの癒しの時間だ。


ニヤニヤしながら、カードを並べて、セイジで、浄化し、自分でブレンドしたハーブティーを飲みながら、タロットカードやルノルマンをスプレッドして、リーディングをする。

最近は、それを、世の人にメッセージとして発信する役割を担いなさい、と宇宙から与えられたインスピレーションをキャッチした。

そのために、動画を撮って、編集してから寝る。


編集した動画を音羽も見せてもらったけれど、とにかく、約1時間、楽しそうに喋っている、ヨキの声とカードをシャッフルし、スプレッドする手が映っていた。


「相変わらず、タフね。一体、何時間くらい寝るの?

まあ、この動画見る限り、楽しく癒されてるのは分かるから、大丈夫だろうけど、睡眠も取らないとね。」

音羽がヨキにそういうと、

「わたし、この世で一番嫌いなことは、寝ることなのよね。2〜3時間で、充分。

それに、この動画、編集してるからこの長さだけと、わたし、カード並べて、実際は、2時間半は喋り続けてるんだよ。

もう、至福の時間!」

と、ヨキは、嬉しそうに言う。


アフォアメーションとは、運の貯金だ。

ある日、夜中に音羽の家にやって来て、教えてくれた。

何気に、部屋のインテリアの写メを見せながら、話してくれた。

小さな黒板と、赤いリンゴのオブジェが、テーブルの上に並んでいる。


「これはブラックボード。

これに毎朝、今日の小さな目標を書いて、それから出かけるのよ。

例えば、今日は笑顔の多い1日でした。とか、どんなに忙しくても、ちゃんとご飯を食べた。とか、そんな小さなこと。

で、忙しい1日の間は、それは忘れてて、帰ったら目に飛び込んでくる赤いオブジェの横にあるブラックボードの文字を見たら、うわっ、今日も叶えた!わたし天才!と思うの。

強化するのよ。自分で自分の叶える力を確認して、自分には、何だって叶えられる!って。

幼児の時から、その日の目標を叶えなかった日は1日たりともない。

だって叶えられることしか書いてない。

でも毎日小さな夢を叶えて、自己肯定すると運の貯金が出来るのよ。

その貯金を使って大きな夢も叶えてきた。」


音羽も、アフォアメーションのことは、知っているし、夢ボードや夢ファイルを作って、叶えてきた。

けれど、このやり方は、初めて聞いた。

小さな奇跡を繰り返して、大きな奇跡もなんなく起こす。

これを物ごごろついた幼児の頃から、毎日やってきたと、ヨキは言う。

ヨキの類稀なる人生は、こうやって作られて来たのかと、音羽は納得した。


「そのことは、ご両親とかに教えてもらったの?」


「違うよ。これもカードかな。

幼い時から、毎日カードを眺めて来た。色々なことに気づいた。

カードが教えてくれたことは、沢山あるわ。

でも、なんでかな?

わたし、日本に帰ってきて、病気になるまで、ずーっと、カードの存在を無視してた。

忘れてた。

こんなに、いつもわたしの人生には、カードが欠かせなかったのにね、、、」


それから、ヨキは、自分で、なぜ、癌になったかを知っていたけれど、母親にも言えずにいたことがある、と音羽に話した。


「ニューヨークに移ってから、わたし、やっぱり舞台一筋だったから、生理のコントロールをしなくちゃいけなかった。

ほとんどのアメリカ人の女の子は、ピルを使っていて、生理をコントロールするのよね。普通の子でも。

ピルは、毎日飲むの。飲んでる間は、生理は来ないの。で、飲むのをやめた瞬間から、始まるの。

だからピルは、4週間分がワンセットになっていて、4週目は、空ビルと言って、ただのビタミン剤とかになってるから、キチンとそのセットを4週間飲んでいれば、空ピルの週は、月桂がやってくるの。

で、多少それを自分でコントロール出来るよね。空ピルの時をずらせば、いいから。

公演中は、毎日、レオタードとかで舞台に立つから、空ピルを捨てるのね。

わたしなんか、ツアリングメンバーだったから、最長10ヶ月、月桂を止めたこともあるわ。

しかも、中量のピルで、アジアでは処方されない量なの。


自然のものを摂って生きる、魔女の生き方から、そうやって少しずつ離れたのよね。

ケミカルなものを入れ続けてたわけだから。

韓国に行ってからは、少量のピルを毎日やっぱり飲んだ。

舞台のために。

ニューヨークでは、企業リーディングをしてたから、もちろんカードとは、毎日話してたけど、

ある程度の荷物を実家に送り返してから、韓国に行ったから、その時に、カードたちを一旦手放したのよ。


徐々に、本来のわたしから離れていった。

魔女の生活とは、かけ離れていった。


帰国して、日本では、ピルを飲む必要もないから、やめた。

また新しい生活になった。

起業するための準備から、実際オフィスを構えて、どんどん仕事をとって、走り回ってたから、カードのことは置き去りだった。


そんな時、体調に少しずつ異変があった。

例えば、顔に今まで出来たことなかった、吹き出物がいっぱい出来た。

皮膚科に行って、塗り薬もらっても、全然治らないの。

それから、手と足に、水疱や嚢胞が出来てめちゃくちゃ痛いの。

病院に行くと掌蹠膿疱症って診断された。

関節とかにも、異変が起きて、痛くて、痛くて、病院によく行く様になった。

爪とか指の関節もなんとなく変形してきて、今度はリュウマチだって言われた。

なんだかいつも重だるくって、身体が辛かった。

お薬を飲んでも治らない。

そりゃあそうよね。

ホルモンバランスを完全に崩して、自然治癒能力を失って、ケミカルなものにばかり頼って、、、

魔女の教えはどこにいったのかって話よね。


そこで、やっと気づいて、勉強し直して、ハーブとかレメディとか、ちゃんと、自分の身体に向き合って、やり直したわ。


でも、時すでに遅しね。

乳癌になった。

ツインレイの片割れ、こうちゃんと出会って、癌に気付いて、検査したら、トリプルネガティブ乳癌だった。

進行も早く、転移も考えられるから、女性ホルモンを抑えるために、卵巣除去って言われて、、、

魔女にとって、子宮や卵巣っていう女性の部分を切るって、、それは、抵抗がものすごくあった。

でも、抗がん剤や、先進医療で、なんとか手術できるところまで回復した。

手術前日に、音羽に、こうちゃんが、去ったって泣いて電話したでしょ。

もうあの時は心も体もボロボロ。

あれが、わたしのタワーね。

音羽が言ってくれた様に、翌日の手術で、癌も、辛い気持ちも、全て切り取ってもらった。

崩壊の後の浄化が始まった。

そして、再び、魔女として覚醒した。

カードに会いに、実家に行って、色々、整理して、生まれ変わった。

生理も、奇跡的に復活した。

病院の先生も驚いてた。

多分、生理は戻らないからって、卵も採取して冷凍保存してくれてるくらいだもんね。

でも、先生が言うには、抗がん剤治療は、癌細胞とともに、健康な細胞も殺してしまう。

卵巣も、大丈夫な健康な卵巣だけど、ホルモンバランスのために片方を切り取った。

だから、あなたの今の体は、生まれ変わった新しい体だって。」


文字通り、魔女の復活だ。


今、ヨキは、統合に向かって、覚醒している最中だ。

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