第33話

 ヤマトは光の子として覚醒した時から、全てを知り、覚悟していたはずだった。しかし、太郎の存在を知り、太郎の世界を知って、己の愚かさを知った。自分は驕り高ぶっていたのだ。


 ヤマトは床に就くと、太郎の夢を見た。向こうの世界で、太郎が仲間と共に旅を続け、頑なだった心が解けていく。目的地が近いことを悟った。闇の帝王がいる場所はまだどこにもない。ヤマトは知っていた。闇を生む者が自らの闇に気付くことで、それが闇の帝王として姿を現すのだと。それは自分を知る事。目を背けていたのはヤマト自身だった。もうすぐ、この戦いは終焉を迎える。


 辰輝に夕べの事を話した。

「そうか。それでいいんだと思う。太郎はヤマトを見ているんだよな?」

「はい」

「太郎には出来なかったことを、お前がやったんだ。二人が入れ替わった意味はここにある。シスターは一人で背負っていたものを、下ろすことが出来たんだ。お前のおかげだ」

 辰輝の言葉が、僕には嬉しかった。感情を取り戻すことが、こんなにも暖かな気持ちにさせてくれる。


「ヤマト、この先の事は、俺は知らない方がいいのか? 闇との戦いの終わりが近いんだろ?」

 辰輝は太郎の身を案じていた。向こうにいる太郎が、このままだと消えてしまうのだ。その前に僕が戻れるのかは分からない。自分が消える覚悟はできていたが、太郎が消えることになれば、辰輝が悲しむ。

「戦いはもうすぐ終わります。そして、向こうで起きた事実を、あなたは知る事になるでしょう。どんな結果になろうと、事実は無情です」

「そうか。俺も覚悟を決めるさ。事実を知らないのはもどかしいからな」

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