第41話 闘技大会当日


 ここ最近はよく眠れている。

 理由としては、もう研究をする必要がなくなったからだ。


 俺はもう、大丈夫なのだ。

 さて、明日は闘技大会である。


 俺は自室の椅子に座って、ぐっと伸びをする。

 緊張はしなくもない。現に俺は眠れないでいるのだから。


 遠足前の少年はこんな気持ちなんだなぁと、俺は初めて思った。そもそもこれは遠足のような楽しいものでもないのだが。


 ◆


「頑張ってくださいね!」

「応援してるぞー!」

「もちろん、頑張ってくるよ」


 俺は、『一年待機室』と書かれた部屋内でのんびりと腰を下ろしていた。あと一時間程度で闘技大会が開催されるらしい。


「緊張するぅ?」


 エレア先生が正面の椅子に座り、尋ねてきた。


「そりゃもちろん。こんな場で戦うのは久しいですか」


 六百年前は何度かあった。

 世界の命運を握る戦いだとかで、民衆に見守られながら魔王と戦ったけ。


 あの時はかなり緊張した。

 俺は意外にも本番に弱いタイプなのだ。


 もう少しメンタルを鍛えておくべきだったな、と後悔する。だが、今更後悔したところで遅いので潔く諦めよう。


 俺がやることは、ただ一つ。

 殺さない程度に潰すということだけだ。


 しばらく雑談を交わしていると、時間なった。


「それじゃあ行ってくる」

「いってらっしゃいです!」

「ファイト、オー!」

「いってらぁー」


 彼女たちの応援を糧に緊張を解すとするか。

 部屋から出て闘技場へと向かう。


「お、前いた最下生じゃねえか!」


 そこには、黄色の制服を着た特待生。あの時の二年生がいた。やはりこいつが闘技大会に出場するようだ。


「まさか、最下生が代表とはな! 一年の担当は頭でもとち狂ったのか?」

「どうでしょう。でも、あなたよりかは何倍もまともだと思いますよ」

「なんだとぉ?」


 言いながら、男が拳をこちらに向けてきた。

 もちろん、その程度ならかわすことだってできる。


 俺は足に敏捷効果のバフを与えて背後に回り込む。


「試合、楽しみですね」

「ちっ……生意気な」


 舌打ちをして去っていく二年生。

 俺はそれを見ながら嘆息した。


 試合でもこんなに煽られると考えると頭が痛い。

 まあ、とにかく潰せばいいだけだから別に構わないのだが。


 闘技大会では、まず一年と二年が戦うらしい。

 三年はシードという形で、最終で戦い合うことになるようだ。


「さて、やってやるか」

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