第40話 ガルドボコり大会ぃ!

 それからは特になにもなく、闘技大会の前日となった。

 午前の授業は通常であったが、午後からは少し違うらしい。


「激突! ガルドボコり大会ぃ!」


 どうやら、俺はクラスメイト全員とボコりあうことになったらしい。なるほど、面倒くさい。


 闘技場の真ん中で嬉々として叫ぶエレア先生を、生暖かい目で見る。それを察したのか知らないが、


「あ、遠慮はしなくていいからねぇ。殺す気でいきなさいぃ」


 ウィンクして言った。

 違う、そうじゃない。


「ちょっと怖いですね……」

「なんか面白そう!」


 正反対な態度を示す二人。

 ユリの方は、前回同様俺と戦うのを恐れているようだ。


 ……負けてやるのは悔しいから適当に降参させよう。


「それじゃあ、並んでぇ」


 俺の前に十五人のが並ぶ。

 どうやら前回のテスト順らしく、一番最初はサシャからだった。


「あははー! ボコるぞー!」


 腕を振りながら、


「〈光の矢ライト・アロー〉!」


 彼女が放った矢をかわし、一気に距離を詰める。

 とりあえず、優しく背負い投げしておいた。


「まげだぁぁぁぁ」

「さぁ、次だ」


 クラスメイト程度なら、魔法を使うまでもない。

 俺は次々と背負い投げを決めていく。


「もしかしなくても……ふざけてるよねぇ」


 と、エレア先生に指摘されるくらいには投げた。

 もちろんふざけている。


「おらやだ! やっと戦えるわ♡」


 彼に対しては本気の背負い投げを決めてやった。

 てか、こいつ成績二位なのかよ。


 意外にも頭いいんだな。


「さて、ラストか」

「お、お願いします」


 特待生との勝負である。

 ユリには俺の筋肉パワーを分けてあるから、ちょっと気をつけなければならない。


 ただ、この様子だと適当に負けて――


「〈火球ファイア・ボール〉」


 轟音とともに発せられた火の玉を、すんでのところで避ける。危ねえ……完全に油断していた。


「今、本気で殺そうとしなかったか?」

「だって、先生に殺す気で行けって言われたので……」


 危うく死ぬところだった。

 別に彼女に殺されるのは嫌ではないが、ここで死ぬのは納得いかない。


 というか、下級魔法でこれって……。彼女に中級を教えたらどうなるんだよ。我ながら俺の魔りょ……筋肉パワーはすげえな。


 でもまあ、動けなくすればいいだけだ。


「〈威圧プレッシャー〉」

「あ、あれ……」


 とある男子生徒にもかけてやった魔法。

 睨まれると、動けなくなる系のデバフだ。


 とりあえず近づいていき、


「背負い投げと、はごいじめ。どっちがいい」

「は、はごいじめで……」


 めちゃくちゃ笑顔でそんなことを言われた。

 なぜか彼女の頬が赤面していたが、それをご所望ならやってあげよう。


 背後に回り込み、脇の下から腕を通して締め上げた。

 もちろん優しくである。


「ありがとうございます……」

「……? ああ」


 なぜ彼女は俺に感謝してくるのだろうか。

 いささか不思議である。


 しばらく締め上げていると、エレア先生が手を叩いた。


「はい! お終い! やっぱり強いねぇ」


 俺からユリを引き剥がしながら、先生は俺に告げる。


「明日は頑張ってね。一年の本気見せちゃってねぇ」


 そんなの言われなくたって決まっている。


「もちろんです」


 とりあえず二年のやつらを潰したい。

 どちらが上か、分からせてやろうじゃないか。

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