第19話 辛い(ロット視点)


 ロットは冒険者となり、とあるパーティーに所属していた。がだ。


「おい荷物持ち! さっさと来い!」

「す、すみません!」


 戦闘をすることなく、ずっと荷物持ちをさせられていた。しかも、平民冒険者の命令によってだ。


 そこで、一つの疑問が浮かぶだろう。

 平民は『下級魔法』しか扱えないのではないのか、と。


 もちろんそれは間違っていない。 


 ただ、ある程度戦闘を重ねた平民は、下級魔法しか扱えなくても威力が出てくるし、一部の貴族が講師となって中級魔法を教えていたりする。


 そのため、冒険者として活動している人も多くいるのだ。


 ただ、平民の冒険者は下級ダンジョンを。貴族出身の冒険者は中級以上をと。そのような決まりはもちろんあるが。


 ロットは貴族なので、男爵や準男爵などの自分の領地に住まう貴族が活動しているパーティーに入ることだってできた。


 だが、全て断られたのだ。


 今まで、ロットは彼らを見下していたからだ。

 そのせいで、加入を認められずに平民のパーティーに入ることになった。


 そして、平民は貴族を嫌っている。

 するとどうなるか。


 自然とイジメは発生するのだ。


「おい! なにボケっとしているんだ! 路頭に迷っているお前を、わざわざ入れてやったんだぞ!」

「そ、その通りです。すみません……」


 力労働に重ねる力労働。

 ポーションや予備の防具や武器。


 全てを詰め込まれたリュックを背負っているロットは、今にも押しつぶされそうになっていた。


「うっ……」


 尻を蹴り飛ばされるロット。

 法では、危害を加えられたら、または加えようとする意思を確認できたら反撃をしてもいい。


 しかし、そんなことをしてしまったら、ロットはソロで冒険者として働くことになる。そんなの、危険すぎる。


「おい! さっさとポーションを寄越せ!」

「はい……」


 もう、ロットに気力は残されていなかった。

 当初のような生意気さも、今はもう薄れてしまっている。


 家に帰れば、父親に罵られ、仕事に行けばパーティーに殴られ蹴られ。


 辛い辛い辛い。


「ああ……」


 ロットは、ダンジョン内の天井を仰いだ。

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