第14話 好き(友人として)だぞ

 学生の朝は早い。

 特に俺なんかは研究する時間を朝にも取りたいから、どうしても睡眠時間が削られてしまう。


 三時間。

 たったそれだけの睡眠時間なのだが、まあ問題はない。


 俺は意外にもショースリーパーの素質があるらしく、比較的体調の不良は起きないのだ。

 少し遅れての登校なので、教室内にはクラスメイトの姿が散見される。


 サシャやユリもいるようだ。


「あ! おはよう!」

「おはようございます!」


 手を振って、それに応える。

 席の座ると、サシャがからかうような視線を送ってきた。


「ねぇねぇ。正直ユリのことどう思う?」

「ちょっと、やめてください!」


 制止するユリであったが、一応伝えておいた方が今後の交友関係でもいい方向に進むだろう。


「好き(友人として)だぞ」

「私もです!!!!」


 バッと肩に飛びついてきて、叫ぶユリ。

 おいおい。そこまで大袈裟に反応する必要はないだろう。


 まあ、俺も嬉しいが。


「ひゅー! お似合いだねぇ!」


 友人として似合っているということだろうか。

 それなら嬉しい。


 適当に喋っていると、エレア先生が入ってきた。

 どうやらもう始業の時間らしい。


「みんなおはよぉ。今日はまず魔法科学をやるからよろしくねぇ。担当はわたしだよ!」


 どうやら、エレア先生が担当らしい。

 ふむ、と背もたれに背中を預けていると、


「期待しているよぉ。ガルドっ」

「はぁ」


 俺にウィンクをしてくる。

 なんだろう。小動物的な可愛さがあるなぁ。


「やっぱり期待されているようですね……」

「みたいだな」


 だが、教師に気に入られるのはいいことだ。

 最下生であっても、彼女に頼むとなにかと融通を利かせてくれるだろう。


「それではまず、みんなの基本能力を確認するよぉ。試験で確認してるけど一応ね。一番実力が分かりやすいのは火の魔法〈点火ファイア〉。で、火の色が青に近いほど魔力が高いってわけ」


 言いながら、エレアはピンと指を立てる。

 そして詠唱を唱えると指先から青い炎が放出された。


 各々に生徒が取り組み始める。

 しかしだ。また俺は変なやつに絡まれたらしい。


 前回とは違う、今度は女生徒が後ろから背中を突いてきたのだ。


「あなた、最下生だから、どうせ小さな赤い火なんでしょ? 見てみなさい。私の魔力を!」


 その娘はの指先からは、立派な赤い火が放出されていた。青くはないものの、火の勢いからある程度魔力はあるのだろう。


 とりあえずだ。素行の悪い生徒に絡まれたら、教師に報告するのが鉄則だ。


「先生。ここに面倒くさい人がいます」

「あぁ。大丈夫よぉ」


 いや、なにが大丈夫なんだよ。

 どうしてそうニヤニヤとしているのだ。


「面倒くさいってなによ! 私のお父様に言って罰を――」

「〈点火〉」


 唱えると、轟音を発しながら青い火。

 いや、炎が柱となって天井を焦がした。


「ええ……」「おいおい、やっぱりアイツ強いんじゃないか」「お近ずきになっとこうかな」


 そんな声が周囲から上がる。


 面倒臭い人は何度も己の目を擦り、そしてなにも言わず席に座り直した。


「先生の力なんて必要ないでしょー。あ、でも天井を焦がしたのは不味いからあとで研究室に来てねぇ」


 そうなるよな。

 だが――ちょうどいいかもしれない。


 エレア先生に相談したいことがあったのだ。

 少し、協力者を求めたい。


 〈死者蘇生〉に関するな。

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