第12話 革命が起きたらしい

「もうほんと、わたしの中で革命が起こったよぉ! ありがとねぇ!」

「いえいえ。これくらいなら」


 エレア先生の話を聞く限りだと、決して魔法科学が衰退したわけではないらしい。


 ちゃんと、俺の時代にもあった一部の知識を彼女は持っていた。


 しかし、個人が持つ魔力量が著しく低下しているらしい。そして、一般人や貴族は『正式な術式』を知らないと見た。


 だから優秀な人で最上級の下辺りの魔法を。この学園の生徒レベルでは上級の下魔法しか扱えないらしい。それも、不完全な状態でだ。


 それ以上の階級の魔法は、ほぼ伝説となっているらしい。だから試験の際、あれほど驚かれたのだろう。


「変わってしまったものだな」


 技術は進化したり後退したりすると言ったが、ここまで変わるものとはな。

 新たな学びだ。


 教科書を置いてきてしまったため、教室に戻ることにした。


「あれ、まだいたのか」

「うん! 待ってたんだ!」

「待っていたのです!」


 わざわざ待たなくてもいいのに。

 学園生活が始まって二日目なのだ。


 きっと、疲れているだろうに。


「いつまで待っても帰ってこなかったから心配したんだよ! それに、授業の説明も聞いていないでしょ! ほら、教えてあげるから!」


 言いながら、サシャが無理やり席に座らせてきた。

 その際に、少し胸が接触したからドキリとしてしまう。


 人生二度目だってのに、女慣れしていないからな。

 ……なぜか悔しい。


「ここは、国語、数学、魔法科学、体育、擬似戦闘訓練、現地実習の六教科をメインにするらしいです」


 なるほど。意外に充実しているな。


「もちろんサブもあるよ! まあ、たまにしかしないみたいだけど。ええと、音楽とか魔法工作とか!」


 音楽か。前世ではそんな教養は持っていなかったから楽しみだな。


 それ以降は、細かい授業単位の説明をしてくれた。

 ありがたい限りだ。


「んでんで! どうして、そんなに時間かかってたの?」


 サシャが机をバンと叩き、身を乗り出して聞いてくる。

 まあ、そりゃ気になるはずだ。


「魔法術式を教えていたんだ。どうやら俺に教えてもらいたかったらしいからな」

「ええ!? エレア先生に!?」

「本当ですか!?」


 どうしてか驚愕する二人。


「エレナ先生ってそんなにすごい人なのか?」

「すごいどころか、超大物だよ! ビッグビッグ!」


 手を広げ、どれくらいすごい人物なのか体で表現するサシャ。


「魔法術式の分野の、最先端を行く人物です」

「なるほど。だからある程度知識があったのか」


 これで納得がいく。

 昔の魔法技術の知識もあったから、この時代では相当な頭脳を持つ人物に当てはまるのだろう。


「ある程度!? えっと、本当にガルドくんってテスト最下位だったの?」

「いや、満点どころか限界突破していたらしい。でも学園長とやらの命令で最下位にされたようだ」


 伝えると、彼女たちの表情が一瞬暗くなる。

 だがすぐに憤怒する。


「それは酷すぎます!」

「最低だね!」


 きっと、あの間は俺が『平民』であることを知っているからだろう。そして、それで俺が差別をされていることを。


「ともかく、陽も傾いてきた。今日は帰ろう」

「そ、そうだね! 帰ろ帰ろ!」

「帰宅です!」


 そうして、俺たちはともに寮へと向かった。

 ……俺は倉庫なのだがな。

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