第9話 テストなんて余裕

 教科書等の確認も終わり、早速授業かと思っていたのだが。


「それでは新入生テストを行うから、みんな教科書は片付けて筆記用具のみ机の上に置いてねぇ」


 どうやら、新入生テストなるものがあるらしい。

 くっそ。知らなかった。早速憧れの授業かと思っていたのに。


「すまない。筆記用具を持っていないから、〈複製〉してもいいか」


 ユリばかりに頼むのもあれなので、サシャにお願いする。快く貸してくれたので、ありがたく〈複製〉させていただいた。


「国語、数学、魔法科学の主要三科目をテストとして実施するから、頑張ってねぇ」


 手を振りながら、よちよちと退出していくエレア先生。相変わらず幼女感がある。


 どうやら、担当監督が教科ごとに違うらしい。

 一度、ステータス鑑定の際に会った教師が入れ替わりで入ってきた。


「まずは国語を行う! 今から配るから、先頭の人は後ろに回していけ」


 国語、数学、魔法科学とやらをやるらしいが、まあ問題はないだろう。

 二度目の人生なのだ。それくらい余裕である。


 テスト用紙を受け取って、後ろに回す。

 そして、俺はペンを持って解答に勤しんだ。


 六百年と月日が経っているから、多少なりとも文法が変わっているのではないかと危惧したが問題ないらしい。


 スラスラと解答することができ、全てを埋めるのにそう時間はかからなかった。多分、全問正解だろう。

 カンニングだと疑われないように周囲を見てみると、突っ伏している者や呻いている者までいる。


 ……そんなに難しいのだろうか。


「お疲れ様」


 ユリとサシャに声をかけてみた。

 テスト間の休み時間に慰め合う……そんな学生らしいことをしてみたかったからだ。俺の場合は……まあ、フリでもしておこうか。


「全然だったー!」

「一応、解けたとは思います!」


 うんうん。これだよこれ。

 実に学生らしい。


「俺はまあ、ぼちぼちだったかな」

「「絶対嘘!!」」

「お、おお」


 総ツッコミを喰らってしまった。どうやらバレバレらしい。


「と、ともかく次も頑張ろう」

「うん!」

「はい!」


 そして数学だが……。

 これも余裕だな。楽勝だ楽勝。


 前世賢者嘗めるんじゃないぞ。マジで。

 いや、一応現職でもあるのだが。


 数学も無事終わり、次は魔法科学だ。魔法学園と呼ばれる場所なのだから、これが一番重要になってくるだろう。


 問題を見てみる。

 …………なんだこれ。


 全部中級レベルの魔法術式の問題じゃないか。

 ちなみに魔法術式とは、魔法の原理を文章として言語化したものだ。大抵、新たな魔法を生み出す際は術式から生み出す。

 

 ……これで本当に世界レベルの学園なのか?


 とりあえず、適当に解くか。

 さすがに、術式全部書けとは言われないだろうから、適度に省略しておこう。


「やっと終わったか」


 俺はぐっと背中を伸ばす。

 じっと座り続けるのは久しいから、なかなかにキツかった。


 前世の頃、賢者として世界のために論文を書いていた時以来だろうか。


「試験結果は明日出るから覚悟しておけ!」


 そう言い残し、担当教師は教室を出ていく。


「ねね、どうだったどうだった?」


 サシャが、キラキラとした視線を送ってくる。


「普通だったぞ。なあ、ユリ」

「そうですね、少々苦戦はしましたが、ある程度は解けました」

「普通……ではなかったのか」


 尋ねると、怪訝な表情でユリが答える。


「普通ではないですよ……?」

「もしかして俺がおかしい?」

「「おかしい」」


 ふむ。なるほどな。

 俺はおかしいらしい。

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