第40話 合流
「うわー二人ともお疲れさまね……」
広い町ではないのであっさりとグロリアと合流することができた。グロリアは薄汚れていたであろうこちらを見て近づくとすぐに魔法で俺たちを綺麗にしてくれた。
エータは感動して震えていた。
「俺これ絶対習得します!!」
久しぶりにグロリアと離れていてありがたさを再認識することができた。エータじゃないが俺も使えるならこれだけでいいから使いたい。土や汗で汚れていた服まできれいだ。
「そう? 頑張ってね〜」
グロリアがエータを撫でている。何だか撫でたくなるのはわかるぞ。
エータはグロリア程度の力ですらグラグラしている。大丈夫じゃないな。あれ。
「どこに宿取ってる?」
「長くなるかなって思ったからこっちの宿よ」
以前とは違う方向をグロリアが示した。
「エータ限界だから」
「ふふふ。そうね。行きましょうか」
「すみません……」
微笑ましく見られてるぞエータ……。本人はフラフラしながら頑張って歩いている。もう町中なので抱えてもおぶってもいいんだが拒否られるだろうな。道中おぶって進んでやろうかと思ったがもしものことを思うと両手を塞ぐわけにはいかなかったのだ。
着いてみればなるほどいった感じで宿屋というか、貸家というか。まぁつまりグロリアは部屋ではなく家を借りていた。
「借りたのは半月分だからそれくらいはここで準備とかしましょうね」
耳打ちされた値段を聞いたら確かに以前泊まった所ではこの金額では半月は無理だ。
空き家の有効活用らしい。
出入りする人間を登録しての鍵ということで二人分の追加手続きをした。それが終わるとすぐにエータをベッドに放り込んだ。寝ろと言わなくても布団で包んだらもう寝ていた。よく生きてこれたな。
「回復魔法もいるかしら?」
「自然回復でいいだろ」
「そう? でも明日起きてこなかったらかけるわよ?」
「それは任せる。ところで今どんなだ?」
今いるのは食事を作るためのかまどと大きな机がある部屋だ。ここの他にベッドルームが二部屋ある。それぞれベットが二つ設置してあった。あと水瓶のある小部屋が外につながっていて見える範囲に井戸があった。残念ながら風呂はない。
「調査なら終わったわよ」
「終わった!?」
なんだかんだと終わってはいまいと考えていたので思わぬ返答に驚いてしまう。しかも中止や切り上げではなく終わった、のか。
「ちゃんと薬は思った値段で買ってもらったから安心して」
「いや、そこじゃないんだが……終わったって進めるようになったのか?」
手当たり次第魔法を試したのか? いや、それは以前したと聞いたような。
「解析ができたとか、色々試してどれかが当たったんじゃなくて向こうから来訪者がいたのよ」
「森向こうから?」
「そう。初めてじゃない? こんな話聞いたことないのよね。いたら絶対噂になるだろうし」
討伐方法が分かっていないがための通行非推奨が、進めなかった障害がなくなった。自力で挑戦でもしてみるかとも考えていたのだが。
あの森の向こうから人が来たのか。そりゃ住人が一人もいないはずはないがこうして現実として来られると色々と聞きたいことがある。本当に来たのなら是非話を聞きたい。
「そいつは今どこにいるんだ」
「調査隊の人とまだ一緒にいるんじゃないかしら? 調査隊の人が先に進んだ地域の話を聞きたがってたみたいだから。私も一緒に聞きたかったけど部外者だからって駄目だったのよね。素材について聞きたかったのに残念」
「ちょっと覗いてこようかな」
グロリアが駄目だったのなら話をするのは諦めるが、実在するのかを見てきたい。
「ね、その前にちょっといい?」
「ん?」
「やっぱり森を越える?」
「そのつもりだったけど」
「そうよね……あ、それはいいのよ? 私もそのつもりだったし。でもエータくんあの森大丈夫かしら」
真剣にグロリアが悩んでいた。
確かに、ここまで来た道のりと違って敵がこちらに襲いかかってくる。多分確実に。他のパーティーが先に入っているとしても襲ってこなくなるほど数が減ることはないだろう。
「下見してくるか」
どの程度か知っておく必要があるな。広さは未知だし。
「あ、今ロアが一回りして来てるわよ」
お茶を入れてきたグロリアがさらーっと言った。
「大丈夫なのか!??? あの森に?! ロアだけで??!!」
ロアは弱くはないが心配だ。
「平気よ〜ケーシャたちを待ってる間に良いものが手に入ってね。声を出すまで触れられないし触れない! っていうのを作ったの。姿も匂いも消えないけどね」
「またおかしなものを作ったな……で、それを付けて行ったのか?」
「そ」
「なるほど?」
それなら平気……か?
「ふふふふ! やーね。ロアはどっちかっていうと運動しにいってるのよ。町にこもってちゃ健康に良くないわ。思いっきり走るにはどこにもぶつからなくて便利そうよ」
「あーそういうことか。つまり別に西の森に行ったわけじゃなくて」
「気ままにその辺走っているわよ。ま! ともかくエータ君の回復待ちね。しっかり休んでもらわなきゃ」
「グロリア体力増強ができるもの作れないか?」
先行きが不安になった俺はついグロリアにそんなことを聞いてみる。
「うーーん。材料があれば? 何かないか調べてみるわね」
しかしグロリアに言ってはみたが急に体力が付くなんて話、俺は聞いたことがない。
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