第48話 冬華は1人の女の子を精神的に再起不能にできるほど怖いらしい

 午前の授業を終えるといつものように由希先輩が教室に呼びに来て部室で昼ご飯を食べる。

 すると由希先輩が

「朝から私のクラスにいる卓球部の部長が震えっぱなしなんだけど何か心当たりある?」

 と聞いてきたので

「私の宮都と長く話していただけではなく宮都に触れようとしましたから少し威嚇をしたまでです」

 とさも当然とばかりに冬華が言うと

「原因は冬華ちゃんだったのね…。もっと優しく言えなかったの?」

 と由希先輩が言うと冬華が

「由希先輩。もし由希先輩に大好きな彼氏がいたとして、その彼氏が他の女性と長く話をしていて、しかもその女性が自分の彼氏の体に触れようとしたら思いますか?」

 そう由希先輩に質問する。由希先輩が少し考える素振りを見せると

「冬華ちゃんごめん。私も多分マジギレすると思う。「人の彼氏に何ちょっかいかけてるんだ!」って言いたくなるね」

 と言うと

「ですよね。だから優しく言うことなんて土台無理な話なんですよ」

 そう冬華が言うと「でも」と言って続ける。

「私は宮都にも怒っていたんです。強く言わなかったから。だからあの時、口では「部活に入らない」と言っておきながら内心では他の女性と話すのを楽しんでいるのではないかと思ってしまって」

 そう言うと由希先輩が

「宮都くんは楽しんでたの?」

 そう聞いてきたので

「なんでそうなるんですか…。あの時はなるべく穏便に済ませたかったから強く言わずに長く話してしまったんだよ」

 と弁明すると由希先が

「宮都くん、私からの忠告なんだけどね、女の子って彼氏が自分以外の女の子と長く話していると”浮気かな?”とか”私といるのが嫌なのかな?”って思っちゃって悲しくなったり、冬華ちゃんみたくなっちゃうの。たとえどんな理由でもね。だから極力そうゆうのはなしにした方が良いと思うよ?」

 と諭してきたので

「そうします。由希先輩ありがとうございます」

 そう僕が言うと冬華が

「約束ですよ。いいですか?」

 と言ってきたので僕は「わかった。約束するよ」と言うと冬華が「約束を破ったら3時間の説教コースですからね?」と言われた。


 弁当を食べ終わると由希先輩と解散して冬華と一緒に入部届を職員室に貰いに行く。

 この道中に「宮都、これは予行練習ですよ!気を引き締めてくださいね!」と言っていたが僕は何のことかさっぱりわからなかったので「お、おう。わかった」としか言えなかった。

 冬華が職員室から出てきて

「緊張しました。どうでしたか?婚姻届けを貰いに行く予行練習は」

 と言ってきたので

「ええ?!これって婚姻届けを貰いに行く予行練習だったの?!」

 とびっくりしながら言うと

「もしかしてわかりませんでしたか?」

 と聞かれたので

「うん。ごめん。わからなかった」

 そう素直に言うと

「まぁ、許します。けど、次はありませんよ?」

 とゼロ距離で言われた。


 教室に行くとさっきまで騒いでいたはずなのに静かになり、また騒がしくなる。

 僕は昴に

「どうして僕と冬華が教室に入ってきた時に静かになったんだ?」

 と聞くと

「朝の一件が効いてるんじゃないか?知らんが」

 そう昴が答えるとそれを聞いていた冬華が

「宮都、私はさっき怖かったですか?」

 と泣きそうな顔で聞いてきたので僕は冬華の頭に手を置き

「僕は怖くなかったけどな」

 そう答えると表情が明るくなり僕に抱き着いてくる。

 そうしていると昴の彼女さんが

「いつもの彼氏にべったりの冬華ちゃんに戻ったね!」

 と言うと冬華が

「私、そんなに怖かったですか?」

 そう彼女さんに聞くと

「怖いというよりは近寄りがたい雰囲気だった」

 と答えると「あのさ」と続けて

「冬華ちゃん、私にも、さっきのような怒り方をおしえてほしい!すー君を怒る時に使いたいから」

 そう言うと冬華が

「いいですよ」

 と言って彼女さんに丁寧に教えていた。彼女さんは冬華が教えたことを1字1句丁寧にメモ帳に書いていく。

 それを見た昴は顔を真っ青にして震えていた。




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