第47話 付き合っているからという理由で勝手に出る種目を選ぶのはどうかと思う

 今は学級活動の時間で、球技大会の種目を決めている最中だ。

 ちなみに僕と冬華は卓球の男女混合のダブルスで出ることになった。理由は仲が良く、付き合っているから。

 同じ理由で昴と昴の彼女さんがバトミントンの男女混合ダブルスに出ることになった。

 はっきり言って意味が分からん。

 そう思っていると冬華が

「宮都、頑張りましょうね!」

 そう言ってきたので

「そうだね!」

 と返す。

 そう話しているといつの間にか球技大会の種目を決め終わっていた。


 次の日の体育の時間に、僕と冬華はまず2人でラリーを続ける練習をすることにした。

 最初はなかなかラリーが続かなかったが、やっているうちにラリーが続くようになり、次第にラリーの速度が速くなっていく。

 すると卓球の女子ダブルスに出る2人組が

「2人ともストップ!ねえ、私たちと練習しない?」

 と提案してきた。すると冬華が

「いいですが、ダブルスのルールを知りません!」

 そう自慢げに言うと

「教えてあげるから。彼氏さんも教えるから来て!」

 と言われた。

 卓球の女子ダブルスに出る2人から説明を受けてだいたいはわかったので試合形式でやってみることになった。

 最初は混乱したがやるにつれてルールを理解できたのかラリーが続く。そしてどんどんラリーのスピードが速くなっていく。

 すると卓球の女子ダブルスに出る2人のうちの1人が

「もう降参する!なんなのあのカップル?!ほんとに初心者なの?!」

 と言ってきたので

「僕はそうだけど、冬華はどうだ?」

 と聞くと

「私もやったことはありませんよ?というよりはラケット自体今日初めて持ちました」

 と答えたと同時にバトミントンのスペースから

「なんなんだよ!このカップルは!意味が分からない!お前ら本当に初心者かよ?!」

 と言われてた。

 それを聞いて冬華が

「あの2人はすごいですね」

 と言ったので

「そうだよなぁ。あいつらすごいよなぁ」

 そう僕も冬華に続けて言うと

「「あんたらもだよバカップル!」」

 と言われた。


 昼休み、昼ご飯を食べていると由希先輩が

「そう言えば、宮都くんの教室に行く前に聞こえたんだけど、1年生の球技大会の卓球とバトミントンのメンバーにすごいカップルがいるんだって。卓球ではルールを教えただけですぐにできるようになったカップルとバトミントンではバトミントン部を圧倒したカップルがいるんだって!」

 と言う。

「すごいカップルもいるものですね」

「だよなぁ」

 そう僕と冬華が言うと由希先輩が急に

「もしかして宮都くんと冬華ちゃんが何か関係しているの?」

 と聞いてきたので

「知りませんよ。ねぇ?」

「そうだね。僕たちは一生懸命やっただけだしな」

 と僕と冬華が顔を見合わせて言う。

 そのとき由希先輩が「絶対この2人がかかわってるよね…」と小さな声で言った。


 教室に戻ると

「俺らのことが噂になってるらしいぞ!」

 そう昴が言ってきたので僕は

「昴、さすがにそれはないだろ。だって初心者なんだし。自意識過剰すぎやしないか?」

 と昴に言うと

「自意識過剰じゃねぇわ!実際に俺らの名前呼ばれてるの聞いたんだよ!」

 そう僕に言ってきたので近くにいた彼女さんに聞いてみると

「すー君の言っていることはほんとだよ」

 そう答えたので

「昴、ごめんな」

 と謝る。

「やっと信じてくれたか。この噂も球技大会までだと思うからそれまでの辛抱だな」

 そう僕の肩を叩きながら昴が言った。


 午後の授業が終わり、冬華と帰る準備をしていると

「ここに宮都と冬華という名前の人はいないか?」

 そう女の子が聞いてきたが僕と冬華が無視すると

「どこにいるんだよあの2人は?!」

 そう言って女の子が違う教室に行く。

 教室を出ようとするとその女の子がまた来て

「このクラスにいるって聞いたんだが?もしかしてもう帰ったか?」

 と言っているうちに僕たちは教室を出た。


「めんどくさい人に目を付けられましたね…」

 というと僕は

「そうだよな。多分あれは部活の勧誘だろうな」

 と答える。

「でも、部活の勧誘って春じゃないんですか?」

「そうなんだけど、暗黙のルールがあってね」

「どんなルールですか?」

 そう冬華が聞いてきたので答える。

「目を付けた人を春以外でも小規模なら勧誘しに行ってもいいってルール」

「そんな暗黙のルール消えちゃえばいいんですよ」

「そうだよなぁ」

 そんな感じで冬華と話しながら帰っていると僕のスマホから通知音が鳴ったので見てみると昴からメッセージがきたので冬華に「少し待ってくれ」と言って返信することにした。

【昴】卓球部の部長がお前たちを探しているぞ!どうする?断っておこうか?

【宮都】お願いできるか?

【昴】了解!

【昴】ちなみにだけど部員も血眼になってお前たちのことを探しているぞ

【宮都】めんどくさいタイプだな。まあ、断っておいてくれ。よろしく頼む

【昴】わかった!そんじゃ

【宮都】おう、また明日!

 とメッセージを送ってやり取りを終えるとそのやり取りを見ていた冬華が

「宮都、やっぱりめんどくさい人でしたね」

 と言う。

「そうだな。いわゆる運動部特有のやつだな。まぁ、昴がだめだったら丁重に断ればいい。なんの問題もない」

 そう僕が言うと冬華が

「丁重にってどういう風にですか?」

 と聞いてきたので

「僕たち、”同人誌作成部”に入っているので無理ですね。引き抜き行為は禁止されてるはずですから。それと、スポーツに興味はありませんので。という感じかな?」

 そう冬華に言うと

「いいと思いますけど、私は部活に入っていませんよ?」

 と言ってきたので

「じゃあ、明日にでも入部届を貰いに行くか」

 と僕が言うと

「なら明日一緒にもらいに行きませんか?なんか職員室に1人で行くのって何故か緊張するんですよね…」

 そう冬華が言ってきたので僕が

「それわかる!なぜかわからないけど緊張するんだよなぁ。職員室の謎だよね」

 と言う。

 そんな感じの話をしながら冬華と帰った。


 家に帰ると鏡花がいつも通り出迎えてくれた。部屋に行くとちょうど昴からメッセージがきた。

【昴】無事断れたよ!

【宮都】サンキュ!

【昴】まぁ、断ったのは俺の彼女なんだが…

【宮都】何故?

【昴】俺がその部長と話していると飛んできてさ。彼女曰く俺が女子と話すと嫌な予感がするんだってさ。

【宮都】いわゆる虫の知らせってやつか?

【昴】そうそう!お前の彼女には実装されてるか?

【宮都】多分実装されているかと思うよ。

【昴】まぁ、そんなことだから。それじゃ!

【宮都】おう!またな!

 と僕が昴にメッセージを送って自分の部屋で晩御飯ができるまで漫画を見たりしながらゆったりと過ごす。


 次の日冬華と教室に行くと、昨日の部長が教室に乗り込んできて

「宮都と冬華!私と直接話さないか?いたら返事をしてくれ!」

 と大きな声で言ってきたが関わりたくなかったので無視していると昴が

「昨日の部長さん、俺言いましたよね?あの2人は部活に入っているって。あと、引き抜きは禁止されているはずですが」

 そう言うと

「君の意見じゃなくて2人の意見を私は聞きたいんだ!」

 と言うと昴が目で「すまん。もう俺には無理だ」と訴えてきたので

「僕と冬華は”同人誌作成部”という部活に入っていますから、引き抜き行為になりますよね?僕たちはインドア派なんで運動とかスポーツは非常に苦手なんですよ。だから断ります」

 そう歩きながら言う。

「な、なら兼部ならどうだ?兼部はセーフだよな?」

「人の話を聞いてましたか?”インドア派なんで運動は非常に苦手”だと言いましたよね?」

 そう僕が言うと

「だったらインドア派からアウトドア派になればいいだけじゃないか!」

 と言ったので僕が「運動部に入る気はない」と言おうとすると急に冬華が冷徹な声で

「あなた物分かりが悪いですよ?私たちは運動部に入る気など微塵もありません。それと、私の宮都と長く話すな。気安く触れようとするな。気分が不快になる」

 と言うと卓球部の部長が顔を真っ青にして

「す、すみませんでしたー!」

 と言って走って去って行くと、冬華が俺の方を見る。

「なんで強く言わなかったんですか?」

「強く言ったらなんか言い合いになって収拾がつかなくなると思ったから」

 そう僕が答えると

「好意はないんですよね?」

 と聞いてきたので僕は

「初めてあった人に好意を僕は持たないよ」

 そう答えると冬華に

「まぁ、いいです。次来た時はガツンと言ってくださいね」

 と言われたので「わかった」と答える。

 冬華と話しが終わると昴が

「今の神宮さん、とても怖かった!俺の彼女のマジギレより怖かったと思うぞ」

 と言ってきたので昴に

「そう?僕には頼もしさしかなかったけど」

 と言うと昴は

「宮都、お前のメンタルがとても強いことがわかった」

 とあきれた感じで俺に言った。

 余談だがこのあと、学校内で「宮都と冬華に近づいてはならない」という暗黙の了解ができたらしい。

 そのことに当の本人たちは気が付いていない。

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