真実の夜 中編 side翠

「…はぁっ、は…。」


だんだん月くんの息が荒くなってくる。


「あれ、もう効いて来ちゃったんだ?今日はちょっと違う薬にしたんだよ」


いつもは朝まで睡眠効果のある薬だが今回はそれはない。

即効性の強い媚薬効果と記憶錯乱はあるが効果時間が短いのだ。


月くんの乱れた姿を見つめる。


「…なんの、はな、し?」


「ごめんね、本当はいつもみたいにゆっくり話していい雰囲気になってからヤりたかったんだけど…えぇと、お父さんの彼女さん?が帰ってくるまでにそんなに時間ないからもう始めちゃおうと思ってさ」


奈津さんとやらが夜中に帰ってくるなら数時間しかない。

いつもは朝まで月くんを堪能できるのに。

僕は月くんの制服を脱がす。


なにをするのかと聞かれたからセックスだと答えてあげた。


「…ふざけてるとしたら全然面白くない、」


「ふざけてるように見える?」


「っ!…だいたい男同士でそんなこと出来るわけ…」


「あぁ、月くんの記憶はそこからなんだね?」


「どうせ忘れちゃうんだし…ま、いっか」


「大丈夫だよ。月くんは初めてだと思っているかもしれないけど君の体は僕をしっかり覚えてるから」


僕がいないと生きていけない体にしてあげる。


「…は?」


「いいから、黙って感じて」


そういって口で月くんを愛した。


「やめ、ろ…」


痙攣してる…かわいい。

…もうそろそろ限界かな?

月くんは力がこもってない手で必死に僕を引き離そうとする。

…そんなことしても無駄だよ


僕は口内で月くんを受け止める。


「?!ご、ごめ…」

無理矢理されたのに僕に謝る月くんをみて愛しさが込み上げる。

コクンと喉を慣らすと顔面蒼白の月くんから信じられない物を見るような目で見られた。


「次は僕の番だよ。」


10回、その数字が頭に浮かぶ。


「や、やめ…っ!」


その後、僕はひたすら月くんに愛をぶつけた。

やめてと懇願しながら反応する月くんはかわいかった。



ふと、僕はある事を思いつく。


「ねぇ、月くん」

その声に月くんの意識が戻る。


「さっきの冗談って言ったやつ。たしかに僕はそうだったけど、たぶんあの人は本気だよ。僕とセックスしたいって顔してたから」


「本当は月くん以外に触れたくない。でも僕と月くんがずっと一緒にいるためには今はあの人の事を利用しないといけないんだ。

…だから今日の夜、あの人と寝るかも。」


そう言って、月くんの気持ちを確認する。

酷いかもしれない。けど、そんなことをしないと月くんの気持ちを永遠に確認することはできない。


「…っ!」

月くんは驚いた顔をする。


「ねぇ、月くん。僕とあの人がこういうことしたら嫌?」


「さっきだって本当は妬いてくれてたんでしょ?このまま月くんか正直にならなかったらこんな風にあの人に触れちゃうよ?いいの?」


…月くんは泣きそうな顔をした。



「…ねぇ、はやく答えてよっ?」


「…っ!」


はやく、自覚してよ。


好きって言って。


思い通りにいかない焦る苛立ちを月くんにぶつけた。

激しく、強く愛し続ける。


…それからしばらくして、僕はやっと月くんを手放した。


その間、何度月くんが泣こうが喚こうが止めなかった。


こんなに好きなのに、月くんは僕の気持ちに応えてくれないの…?



「…ねえ、月くん。ほんとに僕が誰を好きになって、こういう事してもいいって思ってる?」


月くんを優しく抱きしめながらこれで最後だという気持ちで聞いた。



しばらく無言の後


「…い、やだ」


「星川が…あの人とこんな事するなんて…考えたく、ない」


喘ぎすぎたのか枯れてしまった声で僕に必死に伝えてくれた。


「…つ、きくん…」


「はぁっ、嬉しい…」

嬉しくて泣きそうだった。


「今はね、僕の事好きだからとかそんなんじゃなくてもいい、ただ月くんからのほんの少しの嫉妬だけでも…ただ他の人とは嫌だって思ってくれるだけで僕嬉しいよ…」


「大丈夫、最初からあの人に触れる気なんてなかったよ。どうしても月くんにヤキモチ妬いてもらいたくて意地悪しちゃった…ほんとごめん」


「だから安心して眠って?」


そう優しく頭を撫でると月くんは眠りについた。


「…ふふっ。そう、嫌なんだね?」


やっぱり、あの作戦にしよう。

全ては月くんに僕のことを好きだと自覚させるためだった。

















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