真実の夜 前編 side翠

僕と月くんとの時間を確保するため。

最初の目的はそれだけだった。

そのために邪魔をしてくるやつを色々調べているとお父さんの彼女とやらには少し困った秘密があることがわかった。それを材料に少し脅してやればいい。


月くんの家に初めてお邪魔する事になる日、あの時月くんが僕の家に来れない事を予測し、前もって色々下準備をしていた。


少し無理矢理だったが月くんの家に上がらせてもらう事になり、

月くんは僕を家に入れる前に言った。


「星川、前にも言ったと思うけど僕今は父の恋人の奈津さんって人と一緒に住んでるんだ。…ちょっと変わってる家庭だからびっくりするかもしれないけど気にしないで?」

月くんが僕に少し申し訳なさそうに言う。

ほんと…変わってる家庭だよね、頑張ってる月くんを褒めてあげたくなる。


しばらくして先に家の中に入っていった月くんを罵倒する声が聞こえる。


…きっとこんな事だろうとは思っていたが、月くんの気持ちを想像すると胸が痛む気持ちと会ったこともない声の持ち主に殺意を覚えた。


だが、油断させるために最初が肝心だ。

愛想を良くしておかなければ。


そして勢いおく玄関のドアを開いた。



「……え?」


驚いた顔のケバい女の人…これが奈津さんね。

写真で見るよりもっとおばさんだなぁ。


そんな事を考えてながら顔に笑顔を貼り付ける。


「始めまして、月くんの友達の星川 翠といいます。」


女は驚いて声も出ないようだった。


あぁ…これ、ね。

初対面ではいつもこんな感じだ。


「…急にすみません。びっくりさせてしまいましたよね…?僕…アルビノ症で髪の毛も目の色と人と違うんです。」


僕の説明を聞くと納得したようだった。



「…月にこんな綺麗で素敵な男の子と友達なのね。意外…」


気持ち悪い目で僕をジロジロと見てくる。


「とんでもないです。僕こそこんな美人なお姉さんが月くんにいたなんて知らなかったです」


そうやって嘘をつき、わざと顔を赤らめた表情を見せた。

…全部油断させるための計算。


「まあ!正直ね?あなたかわいいじゃない…でも私はお姉さんじゃないの。奈津って呼んでいいわよ?」


ふと、視線が感じたので横目でチラッと月くん見ると複雑そうな顔をしていた。

…あれ、もしかして…?


「残念ね…私今から出かける用事があるのよ。遅くなるからその時には翠くんもう帰ってるでしょ?まあ今日の予定断っても…」


「…僕、奈津さんが帰ってくるまで待ってますよ」


「そう?なるべく早く帰ってくるから」


「ゆっくりで良いですよ、僕はちゃんと起きてますから月くんが寝た後でたくさんお話しましょう?」


そう言って、少し月くんを挑発してみた。

すると、月くんは僕を見て悲しそうな顔をする。


…やっぱり。

月くんが妬いてくれてる。うぅ…かわいすぎでしょ。

早く確認したくてたまんない。


あの人が去った後、部屋に向かう僕は月くんに続いた。


月くんの部屋に来られる事ができて感動した。


「…あの人に一目惚れしたの?」


緊張しながら月くんは僕に尋ねて来た。

…月くんからその話切り出してくれるんだ。

嬉しいなぁ。


僕はシラを通しながらも、ちゃんと否定する。


そして、僕はいつもとは違う薬を混ぜたジュースを月くんに差し出すと月くんはジュースを一気に飲み干す。

それを確認して、


「もしかして妬いたー?」


内心期待しながらそう尋ねる。


「べ、別に星川が誰を好きになろうと関係ないし、僕はただ父さんの彼女だし歳離れてるから流石にだめだと思った…だけで…」


僕から顔をそらしながら月くんはそう言った。


「…へぇ?どーでもいいんだー?」


関係ないなんて言う月くんに少しムカついた。


「誰でも、ねぇ…関係ないってなんて言ってるけど一番関係してるんだよ、月くん?」


何のことか分からないという顔で僕を見上げる。


「月くんってほんと、僕を煽るの上手だよね」


…今日は絶対やめてあげない。


「それはそうと月くん、今日は10回、だからね?」


関係ないなんて言った事後悔させてあげる。

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