第48話 教員彩々(ゴリゴリ熱血教師 1)

 実のところ、私の小説の中には、実話も少しばかり混ざっている。


 例えば小学校4年生のころの話。

 この時の担任はゴリラみたいにごつい男性教師だったんだけど、彼は有り余る熱意に侵されて恐ろし気な方向に突っ走っていた。


 ルールに従わない者はどんな罰をあたえられても当然だと、そう思い込んでいたみたいなんだ。


 朝礼の最中に私語を慎まない子供は、画板(絵を描く時に使うでかい板)が叩き割れるほど強烈に頭をぶちのめしてやってもいいと思っていたし、テスト中に声を立てる奴なんて、たとえそれがカンニング行為を止めるために上げた声だったとしても、横面を張り倒され、挙げ句0点をくらうのが妥当なことだと考えていた。


 ある時。

 体育の授業でうっかり体操服を忘れてきた『マコ』と呼ばれてる男子がいたんだけど。


 こんなおいしい獲物をゴリラ担任が見逃すはずはないよね。

 そのうえ、この日に限ってどうやら彼は非常に虫の居所が悪かったみたいなんだ。


 「体育の授業が受けたいなら、シャツとパンツ一丁でこい。できなきゃ参加させないぞ。親に連絡して説明するしかないしな」


 なんて、ニヤニヤしながらとんでもないことを言いだしたんだ。


 マコは凄く真面目だ。

 真っ直ぐな性格だし誰にでも優しい。

 犬の散歩だって毎日かかさずしていたし、忘れ物だってほとんどしたことがないくらいだ。


 恐らく、このころ下の兄弟が生まれたばかりで家の中も忙しそうだったから、うっかりしてしまったんだよね。

 お母さんの手伝いやなんかでマコが一生懸命になってるって話は、結構有名だった。


 そんなマコがこの時、どんな道を選べたと思う?

 ゴリラ担任の選択肢なんて、あってないようなものだったんだ。


 体育の授業が始まって間もなく。

 体育館の真ん中で座って担任の話を聞いていたクラスメイトたちが、にわかにざわついた。


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