第47話 教員彩々(タバコ教員) 2

 全く理解に苦しむことなんだけれど、恐らくこの手の人間には定石なんだろうね。

 翌日からタバコ教員の小谷先生いじめが始まった。


 このタバコ教員、体育教員のなかでは年齢が高く、上の役がついていたから非常に質が悪い。


 職権を堂々と乱用して、授業補佐という名目で小谷先生の授業について回っては、生徒たちの前で彼を、酷くなじって辱めるようになったんだ。


 毎日見ていてもはっきりわかるくらい、小谷先生の顔色は落ち込んでげっそりやつれていった。

 見ている生徒たちの胃が冷たく強張るくらいにそれは惨い仕打ちだった。


 けどまぁ、このタバコ教員、とても良かったところがある。

 都合の良いことに、ほんのちょっと叩けば埃も煙もたっぷり出る素晴らしいろくでなしだったんだ。


 現在進行形でガッツリ稼いでいる副業のアルバイトやら、やってはならないことをしていた過去のあれこれなど、数々の輝かしい不祥事を盛りだくさん、両手いっぱい抱えてくれていた。


 そんなわけで、小谷先生いじめが始まって数週間とたたないうちに、彼の醜悪な栄光の数々を知らせる匿名の通報が学校に入った。

 これを機に、タバコ教員はすっきりと学校から姿を消すことになったんだ。


 誰一人として寂しがる者もあらわれなかったし、独り身のこのタバコ教員は副業のアルバイトでの稼ぎがちゃんとしていたから、このことで路頭に迷うことにもならなかった。

 小谷先生にも生徒たちにも笑顔が戻って、体育教官休憩室の空気も透明に澄み渡った。


 休憩室隣の良く日が当たる板の間の道場は、私の冬場のお気に入り昼寝スポットになったしね。


 実に平和なものだ。

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