第26話 みっちゃん 6

 結構な目といっても、この時の嫌がらせの内容はまだまだ大したものじゃなかった。


 せいぜい足をひっかけてきたり、ハエの死骸を私の机の上に飾ってみたり。

 カエルやなんかの入った袋を、持ち帰り忘れた手紙たちでとっくに定員オーバーの私の道具箱の隙間に丁寧に詰め込んでくれたり(これは普通に嬉しかったけど)と、そこまで危険なものじゃなかったんだ。


 いつもだったら、小さな虫が一匹飛んでいるだけでも大騒ぎする彼女たちが懸命に取り組んでいる姿は、正直なかなか退屈しなかったしね。


 ちなみに、足元があまりよくない私は、お恥ずかしいことに足をかけられれば100発100中で派手に転んだんだけど。

 転ぶたびに小さい子たちやクラスメイト、仲良し連中の誰かしらがすぐに駆け寄ってきて手当してくれたから、たいして苦痛には感じなかった。


 問題が起きたのは夏休みが明けてからだ。


 夏休み中は例年通り、いつものメンバーで騒がしくも楽しい毎日をすごしたんだけど。

 開けてから数日の嫌がらせラッシュが、これ以上ないくらいに酷かった。

 しかも質が悪すぎたんだ。


 自動車がたくさん走っている道路に私を突き飛ばしたり、階段の上からおしてみたり。

 ちょっと笑えないものばかりだった。


 しかもそれらは、私が一人きりの時を狙って行われるし、相手も4、5人と大勢だったものだから太刀打ちできようはずもない。


 車道には2度突き飛ばされたけれど、1度は車が寸前のところで止まってくれて事なきを得た。


 私を突き飛ばした連中は、ピンポンダッシュのごとく一目散に逃げ去ってしまったから、私は独りで車から降りてきた運転手の怒鳴り声を存分に浴びることになった。

 あまりの驚きと恐怖に固まって心臓もバクバクしていたから、怒られたことの衝撃なんてほとんど感じる余裕もなくて、呆然としたまま家に戻ったんだけどね。


 でも数日後に起きた2度目の突き飛ばし事件は、そんなにうまい具合に回避はできなかった。

 当時私を付け回していた近所の年上の男の子(今でいうストーカー)が、私をかばってかわりにはねられてしまったんだ。


 車がかなりゆっくりだったことと、うまいことボンネットの上に跳ね上げられたおかげで彼は無傷ですんだんだけれど、そのことが一層連中の炎に油を注いだ。


 跳ねられて車の上で呆然としている彼を気に掛けるどころか、青くなって彼に声をかけていた私を数人ですぐさま羽交い絞めにし、その場に落ちていた棒きれを掴んで目の辺りを突き刺してきたんだ。


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