第一章エピローグ 『信頼』

「はあ???そんなことも知らずにわたくしに勝負を挑んだってわけですか?呆れましたわ」

黒川沙耶香は、主人となった俺に対してバカにした声を発していた。


「仕方がねーだろ」


仏頂面になりつつ、黒川沙耶香の罵倒に、力のない返事をする。

彼女の言葉は実に的を得ていた。


「それにしても、本当に知らなかったんですの?この学園が能力者養成学校だって。よくそんなことでこの学園に転入できましたわね」


「知らないもんは、知らないんだよ」


「ふ~ん。いきなり、スプリ―ム4たるわたくしに挑んできたりしているのにそんなことを知らないなんてあるのかしら?まさか、私との勝負にもイカサマまがいのことをしたんじゃないでしょうね」

俺への疑いの眼差しを向けるライトグリーンの瞳。

「んなことはしねーよ。俺は、高潔で綺麗なお嬢様とお手合わせ願いたかっただけだ」


能力といい、黒川沙耶香の正体を隠したことといい、イカサマまがいのことをしたのはてめぇの方だろ?と思いながらもそう口にした。


これからも黒川沙耶香の『信頼』は必要だ。ここで、歯向かうのもよくないだろう。


「あっ。そ」

そう言って、金髪の美少女は俺から目を逸らす。

凡そ、奴隷という響きが似合わない言葉を発してくる少女にも文句は言わない。


なぜなら、

「それで、私と戦えた感想はどうだったの?」

金髪を人差し指でパスタみたいにクルクルしながら俺に声をかけてくる。

ライトグリーンの瞳が不安と、期待に揺れる輝きを見せる。

どうやら、黒川沙耶香という少女はこれまで人の上に立ってきたせいか対等以上の人に何かを言われることがなかったようだ。


「あ~。まぁまぁかな。御しやすい相手ではあったし」

俺は、ナチュラルに煽りをいれてしまう。

口に馴染み切った煽りの言葉は無思考に紡がれてしまう。

『いかん。こいつはもう敵じゃないんだった』



「何よ!あなたなんて、私が助けていなかったら、アスファルトに真っ赤な染みを付けていただけの存在じゃないの」


俺の煽りに対して、大変、ご立腹の黒川沙耶香が目の前でむくれていた。


だが、そう言いつつも、黒川沙耶香はどこか楽しげな表情を浮かべる。

普通の人には怒っているように見えないかもしれないが、俺は、彼女の表情筋が少し緩んでいるのを見逃さない。


「そうだな。ありがとな」

俺は、そう言って金髪をほぐすようにゆっくりと、彼女の頭を撫でる。


「ふんっ。最初から感謝しなさいよね」

どうにかこうにか、スプリ―ム4の一人を奴隷にすることと、信頼を得ることができたようだ。

だが、この信頼は『強さ』によって担保された『信頼』ということを肝に銘じておかなければならない。

彼女の前に現れた彼女と対等以上に戦える相手としての信頼。

それが失われないように俺は、勝ちへの決意をより一層強くした。

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最強のペテン師(嘘)が、世界と美女を奴隷にするようです(第一章完結) keimil @keimil

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