VS 口裂け女 ~プロローグ~ 02
「ぐわあぁ!」
女が叫び声をあげる。体をくの字に曲げ、苦悶の表情を浮かべて。
人面の獣がさらに声を張り上げる。「ワンワン、ワンワン!」
ただでさえ正気を欠いた世界だったというのに、さらに狂気が加味される。
それほどの歪さの中でも、男は揺らがない。つばに隠れ、依然表情はよめない。
男がまた口を開く。「ポマード、ポマード、ポマード。」
追い打ちをかける。「ポマード、ポマード、ポマード。」
くの字に曲げていた上体を起こし、女は男を睨みつける。そして弾かれたように逃走に移った。速い。曲道ではない。真っ直ぐな道だというのに、あっという間に視界から消えていった。
ワン、ワン、ワンワン!
綱を放たれた犬もどきは、一度男を見て威嚇した後、女の方に駆けていった。
「また、出現しましたか。因果なものです。しかし私の前に現れてくれてよかった。あの女と犬。普通の人にはちょっと…。」
男はそこで一度言葉を切る。
「刺激が強いでしょうね。さて、これはまた、対策が必要です。」
呟き、ふっと空を眺めた後、男は女の逃げた方向とは逆に歩き始めた。
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