第二章 VS 口裂け女〜依頼〜

VS 口裂け女 〜依頼〜 01

「…、というのが1週間前のことです」

ここは東京都。にゅんにゅんワールドに存在する第24番目の区、「下町区」のとある建物内の一室。入口には「口裂け女対策本部」と逹筆な文字が踊る。


日差しを背にし、影となった男が言葉を向ける。その向かう先には、小さな小さな生物。この世界において体長15センチ足らずで二足歩行するもの。人語を解し、また獣たちとも言葉を交わす存在。最強の名を欲しいままにするもの。


ハムスター。

最強と呼ばれるハムスターの中で、さらに強さを貪欲に求める個体。


にゅんよが、その部屋にいた。


「その話をにゅんたちにするということは、お仕事の依頼にゅんか?」

にゅんよの影に隠れていたもう一匹のハムスターが口を開けた。ハムスターなのに、最強という言葉からは程遠いおどおどした挙動。

個体名、にゅん。

にゅんよの陰に隠れ、抑圧された生活を強いられているため、己の強さを自覚することは無い。

隣に最強を目指して上り続けるバトルマニアがいれば、如何にポテンシャルが高かろうとも自己嫌悪、自己憐憫、低い自己評価になることは仕方あるまい。誰もにゅんを責められない。

内情を知るものは皆口をそろえて言うのだ、「にゅんよちゃんだから仕方ない」と。


口を挟んだにゅんに対して影が答える。

「その通りです。報酬はすでに用意しております。現金で、1000万。上と掛け合って出してもらいました。」


そこで一度、言葉を切る。にゅんよの反応を試しているのだ。現金1000万。決して安い金額ではない。


庶民の感覚では。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る