光を使いたくない!できるだけ!

光。


そう聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。


普通は、照明や太陽などの、明るくする現象のことでしょうか。

カクヨムの住人なら、光の属性辺りが先に来るかもしれません。

私が今回取り上げたいのは、色々な意味でもっと大雑把なものです。


戦闘シーン、ここで発生する「光」です。



といっても、ただこう言われただけではピンとこない人もいるかもしれません。

わかりやすい例を挙げると、ファンタジー系のアニメかと思います。


現実に準じた戦闘、つまり格闘や剣戟では、本来なら光のエフェクトを入れる必要性は全くありません。

しかし、ファンタジーらしくド派手な戦闘シーンを表現しようとすると、必ず出てくるのが、魔法や必殺技を放つ際に必ずと言っていいほど発生する、光です。

あるいは、剣や魔法以上に、現実には存在しないこの光のエフェクトこそが、ファンタジーを象徴する現象なのかもしれません。


翻って、小説に登場する「光」についても考えてみましょう。


光、確かに便利です。

光のエフェクトならぬ光という単語さえ入れておけば、何となく威力の高い攻撃や、人知を越えた奇跡を、初心者でも演出できている感が出てきます。

時代小説の殺陣シーンですら、斬撃が光に変化する描写が見られます。


ただしこの光、書き手の立場としてみると、これほど堕落した演出もないわけです。


たとえば、魔導士が火の魔法を使うとします。

リアルに表現するとしたら、燃えさかる炎の球をできるだけ忠実に文字に起こしたいところなのですが、実際に火の球を見た人なんて、ネットで動画を見たという人を加えたとしても、ほんの一握りです。


そこで、わかりやすい描写として、中にはこんなふうに表現した書き手もいるはずです。



魔導士が呪文を唱えると、赤い光の球が杖の先に出現して、敵目掛けて飛んでいった。



この後、敵に命中した魔法が爆発炎上したとしても、違和感を覚える人はあまりいないでしょう。(もちろん、未熟な文章だと思われるリスクはありますが)


ただし、光を使えば使うほど、文章だけでなく、物語そのものがチープなものになりかねません。



光のオーラに包まれた俺の白い光の斬撃と、鈍い眼光で睨む魔王の黒い光を放つ魔法が激突し、辺り一面が光に包まれた。



これは極端な例ですが、もう二個ほど、光という単語を減らした文章を読んだことが有る人は、一定数いると思います。

もちろん、光を多用したとしても、文章力の高い作家さんはいらっしゃるでしょうし、結局はセンスの問題です。

読み手にそうと気づかせない腕はあれば、何の問題もないんです。


ただまあ、私も含めて、色々と思い当たることのある書き手の方は結構いる気がします。

文章力を身につけるためにも、光を使うのは、将来の希望を照らすためだけにするのが理想だと思います。


今度は、火の魔法を赤い光の球と表現するのはやめようと思います。

できるだけ!

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