――絶望か、救いか

難しいテーマを物語としてまとめているだけでもすごいのに、散りばめられる世界観(SF)、後半の読者をあっと驚かせる展開、と文字数以上のものがこの小説「エバーグリーン」には詰まっていました。

屋上の制止シーンでの「僕」の声かけはとても傲慢に感じましたが、それも後半で腑に落ちました。

自分には「僕」、「彼女」、それぞれに共感できてしまう部分があって、ドキッとさせられました。まさに近未来、というか、もう以前から訪れているものなのでしょう。
その社会に渦巻く鬱屈としたものをこの小説は受け止めてくれているような、そんな不思議な感覚を覚えました。

「僕」は「救いたい・絶望しないで・希望はある」と言いますが、見方を変えたら、止めようとしているソレこそが救いであり希望であるかもしれません。ディストピアではなおのこと……かもしれないですね。
読めて良かったです。ありがとうございました。


(レビュータイトル、不都合があれば変えますので、遠慮なくおっしゃってくださいね!)

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