持っていかれないゴミ

熊本大震災の応援で、僕は熊本県宇土市に一ヶ月派遣された。平成28年11月1日から31日まで。アパートはウィークリーマンションを派遣先が借り上げており、その一室に住んでいた。交通手段は派遣された人で代々受け継がれている自転車のみ。


燃えるゴミの日は月、木、ビニールゴミは水曜。資源ごみは毎月第一水曜日だった。自炊はしないで、お店で食べ物を買って過ごしていた。当然、缶、瓶、ビニールなどのゴミが出る。第一水曜日に資源ごみの日は十一月二日なのでもう明日だ。となると、缶・瓶は任期終了前にごみ処理場に自分で持って行かないといけないな。燃えるゴミ、ビニールゴミはちょいちょい出すようにしよう。最寄りのコンビニに行って、ゴミ袋を買った。 燃えるゴミはよく見るタイプの透明な袋に赤の文字の袋。そして、ビニールゴミの袋を探しても探しても見つからない。しびれを切らして、コンビニの店員に、


「ビニールゴミの袋はないんですか?」

と尋ねると、

「ビニールゴミは透明ごみ袋に入れて出すんですよ。」

と教えてくれ、透明ごみ袋を陳列棚から取り、僕にくれた。


「あ、ありがとうございます。」


さあ、明日はビニールゴミの日だ。宇土市は派遣者ごとに布団も新品を支給してくれる。布団を包んであったビニール袋はたいそうな量だ。さっそく、明日捨てよう。さあ、コンビニの店員に紹介してもらった透明ごみ袋に入れて、ウィークリーマンションの共有のゴミステーションに放り込んだ。僕より前にも、たくさんの人のごみ袋がすでに出してあった。透明ごみ袋にビニールやプラスティックのゴミが入っていた。


その日の夕方、ウィークリーマンションの戻ると、なんと、僕のごみ袋だけ、回収されていない!え?なんで?とにかく、ごみ袋はとりあえず部屋に持って帰ろう。 何かまずかったのか?他に捨ててあったゴミとも大差なかったはず。一体どういうことだろう。分からぬまま、次の週が来た。


次の週も、同じく、透明ビニール袋にビニールゴミを入れて、ゴミステーションに出した。 その日の夕方、ウィークリーマンションに戻ると、なんと、また、僕のごみ袋だけが、回収されていない。どういうことだ?ごみはとりあえず部屋に持って帰らなきゃ。


次の週、分別が悪かったのかもと思って、部屋の中で宇土市の清掃局のパンフレットで入念にチェックしながら、すべてのビニール、プラスティックゴミの分別状況を見直して、念のため食べ物の袋や容器はゆすぎなおして、ビニール袋に詰めなおして、ゴミステーションに出した。


その日の夕方、ウィークリーマンションに戻ると、やはり、僕のごみ袋だけが、回収されていない。どうなっているんだ? そんなことをしているうちに、部屋がゴミ袋でいっぱいになっていくうちに、いよいよ来週の水曜でビニールゴミの日は終わり。原因が分からぬまま、一人悩んでいた。


それはそうと、資源ごみもだいぶたまってきた。災害派遣という性質上、平日に休むのはよくない。日曜日に空いているゴミ処理場に、日曜日に持っていこう。僕は、一ケ月分の空き缶、空き瓶の入った大きなビニール袋を二つ、棒を使って自転車にバランスよく装着して、行商人のような格好で、街はずれのごみ処理場に持っていきました。ゴミ処理場では、担当者から


「宇土市の方ですか?」


と聞かれたので、当然私は長崎に住民票があるので、


「宇土市じゃありません。」


と答えたら、隣町からはるばるゴミを持ち込んだと誤解されて、社長まで出てくる軽い騒ぎになった。結局、宇土市民価格ではなく、割高の処理費用を支払うことで収まったが、一時騒然となった。


資源ごみはなんとか片付いた。あとは、ビニールゴミだ― いよいよ運命の水曜日が近づいてくる。


僕は、ゴミ処理場からの帰り、いつもと違うコンビニによって、ジュースを手に取り、あと、目についたのは、『ビニールゴミ用透明ポリ袋』と書かれて紹介されているビニール袋。すでに持ってはいるけど、はっきり明言してあることだし、敢えて買ってみるか。


新しく買ったビニール袋に、1ヶ月たまりにたまったビニールゴミを詰め替えました。あれ?こっちのビニール袋、前のビニール袋より中がはっきり見えるぞ?!前のビニール袋は、中は見えるが、うっすら白の色がついているとも言える。 まさか、今まで三週間回収してもらえなかったビニール袋は、『半』透明?


とりあえず、これに賭けるしかない!ゴミも念のため、全て水でゆすぎ直した。これでダメなら、大量のゴミを持って、新幹線に乗るしかない!


宇土市滞在最終日前日夕方。運命のゴミステーション!あ、なくなっている!一ヶ月悩み続けたゴミ問題。ギリギリで解決! 僕は不毛な達成感を抱き、長崎へ帰るため、荷物をまとめた。

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