第3話 始動

さっきまで名前も知らなかった

初対面の人という気がしない。

ぶっきらぼうで人嫌いそうな雰囲気なのに

なぜか気の置けない懐かしい感じがする。



「図書室にはよく来るの?」

「奥まったこの席だと本棚に遮られ、

人の視線や気配を気にせず

本に集中出来るから、時々来ている」

「そうなんだ、同じだね」


「探してる本は見つかった?」

「え?」

一瞬何の事か分からなかった。


「あ、図書室の本じゃなくてKindleで

スマホに入れてる小説をいつも読んでるの。

好きな曲とか聴きながら」


「同じだな。何冊も持ち歩けないから

俺も普段はスマホに入れてるのを読んでいて

気に入った小説だけ本で買っている」




寺西君がフリスクを2、3粒口に放り込んで

ガリガリ音を立てる。そしてもう一度。

チェーンスモーカーならぬ

チェーンフリスクタイプなのだろうな。


「良かったら」

寺西君がフリスクを差し出してくる。

「辛っ!」

私は刺激が強いものが苦手で

ミントタブレットはあまり食べない。



「どんなジャンルの本を読んでる?」

「えっと、いわゆるライトノベルで恋愛系が多いかな」


「そうなんだ。

俺はハードボイルドと推理小説ばかり。

それも気に入った作者のものばかり

読んでる。いわゆる読書家ではないんだ」



この人は見た目通りで分かりやすいかも。


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