第4話 展開

フリスクに顔をしかめる子供っぽい仕草を

昔から知っているような錯覚に陥った。

さっき会ったばかり

そんなはずないのは分かってるのだが。

俺にはそんな気がした。



「寺西君って1人の時間が好きなんじゃない?」

「そうでもないが学校との関わりは

必要最小限にしたい、たちなんだ。

そういう仲間達と学校以外の場所で会う方が多いかな」

「そうなんだ」



何となく感じていた違和感に気付いた。

千里は制服が似合わない。

制服に似合うも合わないもないのだが

他の服の方が、より本来の可愛らしさが

映えるように思えるからだろう。

それを見たくなっているのか。




「日曜は何してるの?」

「この学校の殆どの生徒と同じ、かな。

宿題に追われるか、仲間と会うか

ダラダラ休みを無駄にして後悔するか

だろうな」


失笑されると思ったが千里は意外な表情を見せた。


「ん?」




「えっとね、観たい映画があるんだけど……」

言ってから自分でも驚いてしまった。


観たい映画が公開したけど、友達とも

お姉ちゃんとも予定が合わず、かといって

一人で観に行くのは寂しいなと

先週から思ってたのだけど……


いきなり映画に誘うなんて、突拍子過ぎるのに

寺西君と話してたら心のブレーキが緩んで、

独り言のように言葉に出てしまった。




「明後日か?特に予定はない」


予想外の誘いに正直とまどったが

同時に即答した自分への違和感はなかった。

俺も、よほど観たい映画でなければ、

ひとりで観に行くのは億劫だ。



「チケット取れるか?」


千里がスマホで映画館のチケット予約の

手続きをする。

肩を並べると何故か慣れ親しんだ

いつものシチュエーションのように感じる。



「日曜日の14時15分、駅前のシティタワーモールの映画館で予約したけど大丈夫?」

「シティタワーモール14時15分、分かった」



自分から言い出したのに、思わぬ展開と

自然な流れでトントン拍子に事が進んだ事に

ドキドキ感と呆気なさが混じって

落ち着かない。



「じゃあ日曜の14時にシティタワーの映画館で会おう」

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