第21話 家政"夫"の愛の告白

 康太と京介の甘い日々は始まった。

 昼間は隙を見ては京介からキスをし、夜は毎晩京介の部屋で愛し合い、そして朝まで抱き合って眠る……

 そんなラブラブな日々が始まり2週間が経とうとしていたある日のことである。


 いつものように康太は9階の、和子の生活空間の掃除を終え、10階へともどり、昼食の準備に取りかかろうとエレベーターにのった。



 エレベーターが開くとそこはこのマンションの最上階。

 このフロアは京介の仕事場兼自宅の玄関しか無いので、誰もいないのが当たり前なのだが、珍しく人がいて驚いた。

 客人がおり、その対応に京介が出てきていた。


 その客人とは、高柳寧々さんだった。


 先日8階に引っ越した、和子が、京介とくっつけたいと思っている相手だ。自分がいないこの時間に、彼女が10階へとやってきていたのだ。


 自分の目の前の光景が事実として一瞬受け止められない康太は面くらい、目線をそらし、お辞儀だけしてそそくさと家の中に入っていった。


「あ!康太さん!あのー!」


 寧々に話しかけられるが咄嗟のことで対応など出来ない。無視してさっさと入って行った。


家の中に入り一目散でキッチンへ。


  なんで… なんで寧々さんがきてるの?

  なんで僕のいない時に… なんで?なんで……



 5分経っても京介はまだ玄関外にいる……

康太の心の中は不安でいっぱいだ。昼食の準備が終わらない。

手が進まないのだ。


  早く作らなきゃ

  そもそも食べるのだろうか

  このまま2人で、どこかに行ってしまったら?

  そんなの嫌だ

  京介さんは僕と食べるんだ!



 一抹の不安が過ぎる……

 和子は、今日の昼はいない。友達とランチだ。

通常こんな日のランチは、京介と康太2人でラブラブな食事を楽しんでいた。

 だが、今日は、京介は寧々と食べるのかもしれないと思うとそれだけで胸が張り裂けそうになる。



玄関が開いた


「あっはっはっはっはー、約束しましたよ?それじゃまた」


京介の笑い声がきこえた


  京介さんが笑っている……

  僕と2人の時にあんな声で笑わないのに……

  約束?約束ってなに……


康太の中の嫉妬心が、心全てを覆い尽くす。

手が震える……苦い顔で天を仰ぐ康太…


  つらい…

  ツライ…

  つらい つらい つらい つらい!!!


  こんな気持ち初めてだ

  ダメだ……京介さんは僕のなのに……

  ダメだ……京介さんを誰にも渡したく無い……

  苦しい……


  こんなにも嫉妬とは苦しいものなのか


吐き気を催し、涙が溢れそうなのを必死で堪える康太


「康太?」


京介がキッチンにやってきた

康太はすぐさま京介に抱きつく。

抱きつくというより必死でしがみつく。


「京介さん、京介さん……京介さん!!」


突然の康太の行動に驚く京介だが、すぐさま抱きしめ返してあげる。


「どうした?ん?康太?ちゃんと話して。何かあったのか?」


「京介さん、京介さん、僕……僕……京介さんのこと……

 ………………

 好きなんです!怖いんです!失いたく無いんです!

 京介さんにそんなこと願ってはダメなことわかってます。

 けど、けど僕……京介さんと離れたくない!

 僕……どしたらいいですか?

 京介さんを誰にも渡したく無いんです……

 お願いです京介さん、僕のダメなところがあるなら言ってください……

 僕を見捨てないで……」



 やっと、やっと康太は京介に好きと伝えれた。

 いつも気持ちを言うのは京介で、康太は黙って受け入れていただけだったから。

 だってそれは、家政夫として働く条件だったから。

 許されない恋だとわかっていたから。

 でも、伝えずに他の人に取られるなんて耐えられなかった。


 想いを伝えられない康太のその言動で、時折京介は不安にもなっていた。自分の気持ちを押し付けて、断れないのを良いことに酷いことをしているのかもしれないと。


 やっと、やっと康太から告白をされ、天にも舞い上がる気持ちになれた。


 だから嬉しくて… 嬉しくて…


「康太、本当か?本当に俺のこと好きなのか?」


「好きです!京介さん!好きなんです!大好きです!

 お願いです。

 どうか……どうか……僕を…… 捨てないで……

 ヒック……ヒック……」


康太の目には涙が溢れている。

京介はその涙にキスをした。そして


「コウタ!俺がお前を捨てるわけないだろ

 どれだけ愛してると思ってる?

 どれだけお前のことだけを考えてる?

 お前を手放したりなど俺はしないよ

 コウタ……愛してるよ……

 コウタ……心からおまえを愛してる…… 」


そういうと京介はキッチンの調理台スペースに康太を載せ、キスをし一気に襲いかかる。


「コウタ……お前を手放しはしない…

 愛してるよ……コウタ……愛してる… …愛してるよ

 コウタ…… 僕だけのコウタ……」


「京介さん……京介さん……京介……

 あぁ……お願い……きて……抱いて……

 お願い…… 僕を…… 僕だけを愛して……京介さん」


 こんなことを言われて何もしないような男ではもちろんない京介は、荒々しく、必死で求めるように……お互いの愛を確かめるようにキッチン台のものをめちゃくちゃにしながら貪りあうのでした。

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