最終話:魔法の杖の使い道

 ステラのプロポーズを受けたエラは、荷物をまとめて家を出ました。その際、机の引き出しから魔法の杖を見つけ、魔女からステラに渡して欲しいと頼まれていたことを思い出し、ステラに杖を渡しました。


「あぁ、あの時の魔女様ですか」


「一振りすれば魔女様が現れて、魔法でなんでも願いを叶えてくれます。私はそれで舞踏会に行きたいという願いを叶えてもらいました。かぼちゃの馬車に乗って、綺麗なドレスを着せてもらって……今思い出しても夢のような時間でした」


「ふふ。わたくしも、あの日のことは一生忘れませんわ。魔女様には感謝してもしきれませんわね」


 エラを連れて部屋に戻ったステラは、早速杖を振りました。どこからともなく現れた魔女に、ステラは言います。


「わたくしの願いはただ一つ。あなたに、わたくしとエラの結婚式に来ていただきたい」


 魔女もエラも、ステラの意外な願いにきょとんとしました。


「……え、それだけですか?」


 エラは思わずステラに問いかけます。


「ええ。魔女様はわたくしとエラを結びつけたキューピッドですもの。あなたがいたからわたくし達は出会えた。感謝してもしきれません。ですから是非、式にいらしてください」


「良いのか? 何でも叶うのじゃぞ?」


「ふふ。構いませんわ。魔法に頼らずとも、わたくしの欲しいものは望めば手に入りますもの。王女ですから。ですから、同性婚が法制化された暁には、あなたに招待状を送らせてください。それが、わたくしがあなたに願うことです」


「……わかりました。では、日程がお決まりになりましたらもう一度杖を振ってくだされ。招待状はその時にいただきます」


「ふふ。ありがとうございます」


 それからしばらくして、エトワール王子とステラ王女はそれぞれの恋人を正式に婚約者として発表し、同性同士の婚姻を法制化するために国民投票を行いました。結果は、賛成八割で可決。

 とはいえ、平民であるエラとステラの婚約を快く思わない国民や貴族は多く、二人の結婚はすぐにとはいきませんでした。

 エラは王女に見合う女性になるために必死に努力を重ねました。その結果、世間は少しずつ二人の関係を受け入れるようになっていきました。

 エトワールとルクスの結婚に関しては反対する者は少なかったのですが、「式は妹達と同時に挙げたい」というエトワールの希望により、二人の結婚式も先送りとなっていました。

 やがて、エラの存在が世間に認められ始めた頃、国王から結婚の許可がおりました。

 エラとステラ、エトワールとルクスの二組の結婚式には国民全員が招待されました。

 結婚が決まると、ステラは魔法の杖で魔女を呼び出し、直接招待状を手渡しました。

 こうして、かつて灰被りのエラと呼ばれ蔑まれ、いじめられていた少女は、国の王女に見初められ、国民と、それから魔女に祝福されながら永遠の愛を誓い合いましたとさ。めでたしめでたし。

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