4 リフレクト

 一番二番と、大きなミスもなく曲が前進していった。そしてラスサビ直前の間奏、日向のギターソロ。弦の上を、右手がびゅんびゅん駆け回る。頭蓋の奥まで音をかき鳴らして、でも律と銀次のリズムにぴったりと合わせて、うねるようにヒートアップしていく。

 腹に響くビートが刻まれた。日向が顔を上げ、マイクに叫ぼうとした、その刹那。

 彼の目が慄くように見開かれた。ギターから手を離し、脇に抱えてステージを飛び降りる。観客が何事かとどよめく。曲が止まった。

「渚ちゃん、上!!」

 走り寄る日向に叫ばれ、反射的に空を仰ぐ。でも、空はあまり見えていなかった。さんさん太陽を照り返す何かが、私に向かって落ちてくるから。

 全身が硬直する。枷でもはめられているみたいに、逃げたくても動けない。もうすぐ自分にぶち当たるんだろうな、という当然の推測だけが、脳内にアナウンスされた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る