3 midnight

「おっ出てきた出てきた」

 望月――いや祇園は、そう双眼鏡をのぞいてニヤついた。傍らには、二脚にセットされたスナイパーライフル。丁寧に磨き上げられた、沙羅の形見だった。

 桃子をつき従えて、事務所ビルの屋上に立つ芹沢。フォルムや仕草からしても、間違いなく本人だった。

 祇園がうつ伏せになってライフルを構える。風速風向ともに変動なし。大きな修正は不要。あとは鍛え上げたインスピレーションで、その柔らかな皮膚を屠るのみ。

 ターゲットスコープの赤い十字架が、芹沢の喉笛を追い回す。くそっ、手ぶれがひどい。沙羅ならこんなことで手間取らないのに。

 ごめんな沙羅、冴えない兄貴の方が生き残っちゃって。代わりになんて言えないけど、憎き殺人鬼どもの頭目、今からそっちに送ります。どうか、気の済むまで懲らしめてやってください。

 Bist du glücklich?

 祇園はライフルの引き金を引いた。

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