第40話【最良の選択】
検査から逃げて原因も分からないまま1.2か月が過ぎていき世間は【新型コロナウイルス】が猛威を振るっていた。
そんなある夜中だった。
またしても腹部に耐えられないほどの痛みが走った。
また救急で行こうかと考えたが「行っても同じことを言われて帰るだけか。」と思って諦めた。
その代わりに、胃と大腸の検査を次は絶対受けようと腹を括りネットで調べた。
すると別の病院で【当日検査OK!下剤もこちらで飲めます】みたいな広告を見つけた。
その時、食欲不振で体重が6キロ落ちたほど食べていなかったので「このまま明日行ける!」と思い即ネットで予約した。
それが朝方4時頃だったと思う。
それから数時間起きたまま待ち、朝の9時頃にその病院から電話が来た。
「今日、内視鏡検査でご予約されてますよね?」
「あ、はい。どうしても診て頂きたくて。」
「一応、こちらに来てからの医師の判断次第になるのですがよろしいですか?」
「え?はい。お願いします。」
そうして、自宅から電車と徒歩で40分ほどかかる病院に来た。
「先生。もう本当に辛いんです。自分の事よりも妻、子ども、周りの人に迷惑ばっかりかけて。原因が分かればそれに向かって治療ができると思うんです。お願いします。」
こうして今まで行った病院での血液検査の結果や、CTをとっても異常がなかったこと、それに今の症状を必死に説明した。
―【その日初めて病院で泣いた。必死に説明していると涙が溢れて止まらなかった。
自分は働きたい。社会復帰したい。そう思っているのに出来ない矛盾をどうにかしてほしい。その思いで一杯一杯だった。】
「これは、おそらく【過敏性腸症候群】は間違いないと思います。」
「過敏性腸症候群ですか?」
「はい。心身症の一つとも言われています。」
「はい。」
「それに血液検査の結果を見ても、年齢的にも内臓ではないと思います。」
「と、言いますと?」
「今日のところはこの薬を処方しておきます。この薬が効くと思いますので試してみてください。」
そう言っていわゆる【安定剤】を処方された。
帰宅後、その薬について調べてみると安定剤の中でも弱めの薬だった。
そのため服用しても効いているのかどうかは、その時は全く分からなかった。
【過敏性腸症候群】についても調べると確かに当てはまる項目はいくつもあった。
そして1週間後、再びその病院を訪れた。
「薬どうでしたか?」
「正直分からないです。何というか、気持ちが落ち着いたかな?くらいは思います。」
「そうですか。私は心療内科に1度行ってみるのを考えても良いと思います。」
1番聞きたくない言葉だった。
―【自分は病んでるのか?】【俺の頭はおかしいのか?】【薬漬けにされるのか?】言葉が悪いが無知の僕がその時思った素直な気持ちがこれだったと思う。
「心療内科ですか・・・・」
「はい。心療内科は完全予約制だと思いますので、早めに問い合わせてみるのが良いと思います。」
「分かりました。」
―先生若いから経験不足で見逃されてるとかないよね?とか失礼なことを思っていた。
しかし、今まで行った病院の中で内科でありながら1番話を聞いてくれて親身になってくれた病院だった。
内科のイメージは他の患者さんも多く診ないといけないのでサッと終わる印象が強かった。だけど、ここの先生は20分以上話を聞いてくれた。
今思うと他の患者さんにも申し訳なかった。
僕は悩んだ。どうするのが1番良いのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます