第16話【またいつかその日まで】

それから最近の出来事を千秋に話した。


実は千秋には黙っていた。

バイトを辞めたこと。

旅に行きたいこと。

起業の話があること。

その話をした。


もちろん大賛成で応援してくれると思っていた。

だが予想とは裏腹に大反対された。


「まず大学も辞めて働かずに旅に行くなんて、私との将来どう考えているの?」


「いや、旅が終わったら仕事するし人生の糧になると思うんだ。」


「で、結局旅を中断して起業?どういうこと?」


「起業して稼いでから、旅をしても遅くないと思っている。」


それから酒井や大沢さんと、どんなビジョンを持っているかを話した。


千秋は暫く考えた様子を見せ、口を開いた。


「分かった。じゃぁ私と別れて。」


「え?」


「そんなの上手く行くとは限らないし、稼ぐのにどれだけの時間が掛かるか分からない上に、稼いだら旅に行くんでしょう?何年待てば良いの?その間どれくらい会えるの?私は普通に就職してくれて、普通の生活ができればそれでいいの。贅沢なんてしなくたっていいの。」


すごい悲しそうな表情と、もの凄い怒っている表情が顔に混じっていた。

それから必死に丁寧に何度も説明したが、分かってもらえることはなかった。


『千秋は何も分かっていないな。』

そう心でつぶやきながらも、実際に稼いだら戻ってきてくれる。

そう信じてやるしかない。と思って決断した。


『分かった。別れよう。運命ならまた寄りが戻ると思う。』


そう言うと彼女は僕の元を去って行った。


そして、その足で酒井と大沢さんに会いに行った。

作戦会議だ。


千秋と別れることになるとは全く予想していなかったが、寄りを戻せると自信があった。

だからそこまで落ち込むことなく次へ進めた。


「これから具体的に何を準備して、どうしていきますか?」


すると大沢さんから。


「まずは資金集めをしないといけないな!オフィス借りたり、事務用品買ったり色々お金かかるからな。」


「確かにそうですね。僕は自己資金で100万くらいなら出せますけど、酒井は?」


「都会の夜景の綺麗なオフィス借りたいなぁ~!俺は、消費者金融から借りても300万が限界だな」


「俺も300万だな」


その時の僕は会社を作るってめちゃくちゃ金掛かるんだなと思っていた。


「じゃぁ僕も借りて300万にしますよ!」


「お!できるのか?そしたら頼むわ!」


こうして全員300万円を持ち合わせることになった。


それから毎日金策に走った。

僕はその時仕事をしていなかったため、消費者金融ではなく手あたり次第にスマホの電話帳から知り合いを見つけ電話をかけ続けた。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る