第15話【誘惑】

約束当日。約5年ぶりに酒井という男と再会した。

二人は馴染みのファミレスで待ち合わせしていた。


「かなり久しぶりやね」


「うん。そうやね」


「今、仕事してるの?学生?」


「大学も辞めて、仕事も辞めて、海外へ旅に行こうと思うんだ。お前は何してるんだよ」


「へぇスゴイな。海外か~。実は今日さあ話があるんだよ」


「うん?なんの?」


「俺会社を起こそうと思っているんだ」


「マジ?すごいじゃん!なんの会社やるの?」


「イベント企画の会社!先輩と一緒にやるんだけどさ、人手が少なくてさ。」


「イベント企画?」


僕にはその業種がどんなものなのかピンと来ていなかった。


「まぁイベントよ!例えばコンサートスタッフの手配とか、大きなスポーツの祭典とかさ、時には芸能人とも一緒に仕事するんだぜ!!!!」


彼の目はギラギラして、希望に満ち溢れているのが感じとれた。


「でさぁ、お前にもイベントの会社手伝ってほしいんだよ。」


「いや、俺は海外に行くしさ。旅もしたいし。割と自由に生きたいと思っているから、辞めとくよ。それに知らない業界だし。」


「いや、お前考えてみろよ。立ち上げメンバーで成功したら良いポジションにも就けるし、それで稼いだお金でどれだけの旅や贅沢ができると思ってんだよ」


話を聞いていると、彼の雰囲気に飲み込まれていきそうだった。


「確かに。それから旅をしても年齢的にも遅くはないか。」


「そうだろう?なぁ一緒にやろうぜ」


それから30分ほど色々聞いて、そこから1時間ほど悩んだ結果。


「分かった。やってみるか!!!」


「さすが!頑張ろうな!」


こうして友達とイベントの会社を作ることになった。


それから数日後、酒井の言っていた先輩にも会った。


先輩は大柄でラグビーとか柔道をやっていそうな感じで、髪は綺麗に整えていた。髪形はツーブロックで七三に分けて色黒な方だった。


持っている鞄、靴、時計、全部ブランド物。

ブランド名はよく分からないが絶対高いだろうな。と思って見ていた。


「初めまして。大沢です。酒井から色々話は聞いてます。」


「あっ、こちらこそよろしくお願いします。」


それから大沢さん、酒井、僕の3人でこれからの事を話し合った。


「なるほど!面白そうな計画ですね」


「だろ?先輩に付いていけば間違いないんだって!」


僕はその時すでにお金持ちになった気分だった。









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