第14話【尊敬】

資金もそれなりに貯まり、そろそろ海外へ行くタイミングを考えていた時だった。


スパロボ店長が転勤になったのだ。

新支店の立ち上げらしい。

とてもショックだった。

僕は店長を尊敬していた。


実は、1度バイクの仕事を辞めようとしたことがあった。

それはバイトに慣れてきて、自分に自信が付きもっと偉くなって指示する側の人間になりたいと思っていた時だ。


今、一緒に働いている人がベテラン過ぎるだけでなく、みんな本当に仕事ができた。

【精鋭部隊】みたいな集団だった。

上が詰まっていて、埒が明かなかったのだ。


そんな時【オープニングスタッフ募集!!】と書かれた広告を見て、店長に『来月で辞めたいと思っています。』と伝えた。


すると『オープニングスタッフか何かで働いて、上に立ちたいんだろう?』と何も話していないのに図星を突かれた。

それに対し色々と言い訳をした僕に対して『そうやっていつまでもいつまでも親父さんが亡くなった事を言い訳にして生きていくんだろう。』と核心的なところまで突いてきた。

その時、店長は40歳くらいの年だったが『この人はスゴイ人だ、色々な人生経験を積んでいる』と本能が感じとった。


後に聞いた話だが、店長は僕に店を辞めてほしくなくて店の次世代を担う存在として期待してくれてたらしい。

そんな恩義のある店長が去るならば、このタイミングしかないと思い僕はバイトを辞めた。

今思えば、承認欲求も、自己肯定感もこの時が1番高かった。


そして、全てのバイトを辞めて海外へ行くための準備を始めた。


―どんなバックがいいかな。


―どんな服装がいいかな。


―ヒッチハイクするならペンと画用紙はいるのかな。


―急に襲われたりしないかな。


などと初めての1人海外に期待と不安で一杯だった。


そんな矢先、友人から連絡が入った。

『元気にしてる?今度ご飯でも行こうよ』と。


久しぶりの連絡にビックリしたが、嬉しかった。






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