#子供を預かった話【1話完結!スーパー短編】

「こんばんは、クリス米村です。


あいかわらず暴れてるな、コロナのヤツ。


おかげで、ずっとマンションに閉じこもってなきゃいけない。


リスナーのみんなはどうだ?


イライラしちゃうよな。


うちは最上階のペントハウスだからさ。


開放的なんだ。


日差しもたっぷり入るから、それほど閉塞感はない。


だけど、おまえらはもっと狭いところに住んでんだろ?


息が詰まってないかい?


もし息が詰まるようなら、深呼吸をするといい。


そうだな、2、3回やればいいか。


気持ちがスッと落ち着くはずだ。


まるで熟睡したあとみたいに。


周りのヤツにも、この方法をすすめてみろ。


必ず感謝される。


それはそうと、この前、オレのプライベートの友人が、電話をかけてきた。


友人っていっても、それほど仲がいいわけじゃない。


お互いのことを、よく知らないと言ってもいい。


例えばあいつは去年、オレへの誕生日プレゼントで羽毛ふとんを持ってきた。


羽毛ふとんだぜ。


それくらいオレのことをよく知らないんだ。


最高級品高だったとしても、オレのことを少しでも知ってれば、そんなものをプレゼントしようなんて思うわけがないからな。


まあとにかく、そいつはシングルファーザーで、6歳の子供がいる。


電話の要件は、子供を預かってほしい、って。


仕事の締め切りが迫ってて、ヤバいんだと。


コロナの時期だから、家族のいるヤツには頼めないだろ。


困りはてて、1人暮らしのオレに頼んできたらしい。


まったく、参るよ。


その日はたまたまオフだったから、なんとなく断れなくてさ。


しぶしぶOKした。


で、子供が来たわけ。


思ったより行儀のいい子供で。


親がバカだから、逆に子供はしっかりしてるってパターンかもしれない。


マスクもちゃんとしてたし、手も洗ってた。


オレはほめてやったよ。


きみ、なかなかやるじゃないか、って。


うれしかったんだろうな、その子供。


急に元気になって、部屋の中をあちこち動き始めた。


いいんだ、いいんだ。


うちのペントハウスは広いから。


好きなだけ遊べばいい。


思いきり遊んでほしいから、ソファーを端に寄せたりもして。


じつは、お腹が空くと思って、前もってお菓子を用意してたんだ。


子供の好きそうな、ポテチとか、シュークリームとか。


きっと喜ぶだろうなって。


だけどさ、その子供、食べなかったんだよ。


まったく。


最初、遠慮してるのかと思ったんだ。


よくできた子供だったから。


でも、話を聞いてみると、親のしつけで、スナック菓子は食べちゃダメだって言われてるらしいんだ。


体に悪いから、って。


有機栽培されたもの以外は口に入れるな、って言われてるらしい。


いいんだ、いいんだ。


せっかくオレが前の日に用意したものだけど、子供の言うことも一理ある。


あのバカ親にしては、ちゃんとしたものを食べさせてるんだなって、オレは感心したよ。


三つ子の魂百まで、っていうからな。


あの子はちゃんとした大人になると思う。


だけどさ。


言い方が、さ。


ぼく、病気になりそうなものは食べません、だって。


しかも、クリスさんは体に悪いものを食べてるんですね、って言ってきたんだ。


オレは言ったよ。


きみの言ってることは正しい。


スナック菓子を食べたいと思わないなんて、とっても感心なことだ。


だけど、6歳のくせに、体にいいものを食べた方がいいとか、オレに説教するな、って。


はじめてだよ。


6歳のガキに怒ったのなんて。


きみがオレの体の心配をするのは、どう考えてもおかしい、って言ってやった。


そしたらその子供、シュンとなってたから、果汁100%のぶどうジュースを出してやったよ。


これは100%だって言ったら、安心してゴクゴク飲んでた。


世話が焼けるね、子供ってやつは。


子供のいる家庭は、大変だ。


じゃ、曲にいこうか。


世話した疲れが、まだ残ってる気がする。


しばらく子供は勘弁してくれ。


今夜はこんな曲がいいんじゃないか。


いいのがあった。


聴いてくれ。


『きみほどじゃないが、オレだって十分若いんだぜ』」


   ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

教訓👉 ムキになったのかしら。笑


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