#ジムのトレーナーの話【1話完結!スーパー短編】



「こんばんは、クリス米村です。


東京は、まだちょっと暑いか。


リスナーのみんなが住んでるところはどうだい?


北はオホーツク、南はグァムまで、オレのファンがいるらしいから。


極寒の海で魚を捕ってる漁船でも、聴いてくれてるっつんだから、うれしい話だ。


今ごろ、オホーツクではカモメが鳴いてるかな。


オレのラジオに夢中になって、沈没しても知らねーぞ。


ハッハッハ!


東京は、たまに涼しい日もある、っていう程度だな。


そんなこんなで、たるんだ体を引き締めようと思ってさ。


ジムがよいを再開することにしたんだ。


あまりに暑すぎたら、トレーニングする気が失せるけど、今の気候なら大丈夫。


ちゃんとセキュリティのしっかりしてるジムを選んだ。


ファンが押し寄せて、密になっても困るからね。


基本的に、ジムで顔を合わせるのは、専属のトレーナー1人だけ。


だからオレがそのジムへ行ってることは、そのトレーナー以外は誰も知らないし、知らせるつもりもない。


でも…


そのトレーナーがしゃべりそうなんだ。


口が軽そうなんだよ。


オレがトレーニングしてる間も、ずっとしゃべってる。


あまりにうるさいから、オレが無視してたら、鏡に向かってひとり言を言い始めるんだ。


変だろ。


それに、芸能人の噂も好きみたいでさ。


誰それに会っただの、サインをもらっただの、しょっちゅう言ってる。


自慢げに。


オレもさっそくサインを書かされたよ。


「〜さん江」ってな。


いや、ジムのこと、専属トレーナー以外、誰も知らないって言ったけど、事務所の人間は知ってるんだ。


そいつらに、このジムをすすめられたってわけ。


ハメられたんじゃねーかな。


クリス米村がかよってるって、すごい宣伝じゃん。


2、3ヶ月したら、あそこのジムでオレが筋トレしてるCMが流れる気がする。


まあ、トレーナーが必要以上に厳しくないのは、いい点だと思うよ。


なんて名前の器具だっけ、持ち上げるやつ。


ちょっと忘れたけど。


あれを最初に渡されたとき、オレは持ち上げられなかったんだ。


そしたら、あのトレーナー、重いのはやらなくていいって言ってくれたし。


それに、あれだよ、足を上げるやつ。


あれもオレには向いてなかった。


普通なら、無理やりやらせようとするんだけど、あのトレーナーは、ほかのメニューにしましょうって言ってくれたし。


ひねるやつもそうか。


オレには向いてなかった。


ほかにも、グィッとするやつとか、パチーンとするやつもそうだな。


ボンってタイプもあった。


とりあえず、やれるだけやって、疲れたら休んでいいって、言ってたし。


お菓子も、好きなだけ食べていいってさ。


オレはスパルタが嫌いだから、あのトレーナーと相性はいいと思う。


この調子でがんばってたら、半年もたたずに、オレの体はバリッとすると思うんだ。


たぶんな。


あいつ、おしゃべりさえ、直してくれりゃあな。


じゃ、今夜はオレがジムでいつもかけてる曲にしよう。


おまえらが筋トレするときも、これを聴いて、「クリス米村ががんばってるんだから、自分もがんばらないと」って、思ってくれ。


マジでこの曲、やる気が出るんだよな。


それじゃ、聴いてくれ。


『別に痩せなくていいんだぜ』」


  ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

教訓👉逆にね。笑



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ラジオ品川 99.92FM

Navigator クリス米村

『クリス米村のGO❗️GO❗️レインボー❗️〜今夜もパーリーしようぜ〜』

毎週木曜ほぼ21:30〜恋人たちが眠るまで

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