#新大学生からのハガキの話【1話完結!スーパー短編】


「こんばんは、クリス米村です。


9月に入って、やっと涼しい日っていうか、溶けるほど暑い日はなくなってきたな。


たまに、1秒も外に出たくない日もあるが。


でも、梅雨の蒸し暑さに比べたら、まだマシだろ?


よかったな。


最近のオレは、ほぼ外の空気に触れてない。


マンションの地下に迎えの車が来て、パジャマのまま乗る。


で、放送局へ向かって、また地下駐車場に着くんだもん。


あ、でも夜は食事で、一瞬だけ外へ出るか。


車のドアから店のドアまでの、1メートルか。


長くて2メートルだ。


それ以上は、歩かないようにしてる。


暑いのがイヤだから。


そんな感じだ。


こういう細かい情報、リスナーは知りたいんじゃないかな。


今週はハガキが多いんだって?


じゃ、今夜はそっちを処理することにしよう。


「処理」なんて言うと、サラリーマンみたいだけど。


処理されないようにしろよ、サラリーマンのリスナー。


オレがリスナーの幸せを、心から願ってるってことは、覚えておいてくれ。


今夜は気分がいいから、なんでも聞いてくれてOKだ。


政治でも経済でもエンタメでも、どんな質問にもバチンと答えてやる。


じゃ、いこうか。


『桃源郷の子羊 18歳 東京都


こんばんは。


いつも楽しいラジオ、ありがとうございます。


去年の12月、高校3年の受験期ということで、ラジオを通じてクリス米村さんに「がんばれ」と言ってもらった者です。


応援してもらったかいがあって、なんとか志望校に合格できました!


本当に、本当にありがとうございます!


クリス米村さんの言葉に、何度も励まされました。


いくら感謝してもしたりないくらいです。


それで、新入生として4月から大学生活が始まったはうれしいのですが、コロナのせいで、まだ一度も登校してません。


親の仕送りで借りたアパートと、近所のコンビニを往復する毎日です。


クリス米村さんのおかげで、せっかく大学に合格できたのに、こんなことになるなんて…


でも、いつかはコロナ禍も収まると信じてます。


今の楽しみはクリス米村さんのラジオだけと言ってもいいくらいです。


どうか僕にもう一度、励ましの言葉をください。


よろしくお願いします』


ふーん。


まったく覚えてないな、おまえのことは。


12月?


去年の?


なんか受験生のコーナーがあったっけ?


へー。


で、こいつのハガキを読んだんだ?


ふーん。


よかったじゃん。


合格できたんだろ?


まだ何かほしがってんの?


ずーずーしいな、おまえは。


自分でなんとかしろよ、大人だろ。


オレのラジオだけが楽しみ、っていうのはいいと思うよ。


そういう感じ、嫌いじゃないぜ。


学校に行けてないのか。


それはつまらんな。


普通なら、授業があって、サークルの勧誘を受けて…


みたいな感じだろ。


こいつはもともと東京?


アパート借りてるっていうから、どっか地方か。


だったら、東京生活を楽しむのもいいかもな。


だけど、コロナのせいで、ぜんぜんできないと。


困るよな。


まあ、そのうちなんとかなるんじゃないの。


じゃ次のハガキだ。


『桃源郷の子羊 18歳 東京都…』


なに?


同じヤツ?


バカか!


オレのラジオだけが楽しみっていっても、ヒマすぎるだろ!


わかった、わかった。


この曲、聴いたら元気が出る。


たぶんな。


じゃ、聴け。


『休み休みいこうぜ』




    ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

教訓👉大学生の悩みに適当に答えるクリス米村。



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ラジオ品川 99.92FM

Navigator クリス米村

『クリス米村のGO❗️GO❗️レインボー❗️〜今夜もパーリーしようぜ〜』

毎週木曜ほぼ21:30〜恋人たちが眠るまで

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