#アンチの話【1話完結!スーパー短編】


「こんばんは、クリス米村です。


8月に入って、学校が休みになったからかな。


ハガキがやたら来てるって、スタッフが言ってた。


夏休み前の5倍らしい。


うれしいよ、もちろん。


ただ、スタッフは徹夜だ。


ほんと、幽霊みたいな顔でスタジオの外を歩いてる。


申し訳ないと思ってさ。


ハガキやFAXが異常に多いのは、オレのせいでもあるわけだろ。


差し入れしたよ、かわいそうになって。


オレが今、ハマってるガムを、ダンボール3箱ほど、スタッフみんなにあげることにした。


うまいんだよ、あのガム。


キウイ味で。


レモンほど酸っぱくないし、かといって、ブドウやイチゴほど甘くない。


ちょうどいいんだ。


あれを噛みながら、がんばってほしい。


3箱だから、たぶん3000個ある。


持って帰れる用に、たくさん持ってきた。


気に入ったら、家族や恋人にもプレゼントしてほしいな。


10個ずつとか配ったら、喜ばれると思う。


ガムパーティを開いたりして。


盛り上がるといいな。


まあ、そんなわけで、今夜はハガキを消化することにしよう。


さすがのオレも、1枚は読むぜ。


うれしいだろ?


どれどれ。


『埼玉県 クリス米村がなんぼのもんじゃい』


なかなかいいラジオネームじゃないか。


オレはこういう威勢のいいヤツは好きだ。


自分の意見をはっきり持ってるしな。


いろんなファンがいていい。


オレのことが大好きなファンもいれば、ほんのちょっぴり気になるだけってヤツもいる。


それが正常な状態だし、健康的だ。


じゃあ、ハガキの中身は、と。


『お便りを出すのは、これで25通目になります。


クリス米村さんに読んでほしいと思いながら書きました。


どうしてこれまでに25通もハガキを書いたかというと、クリス米村さんの人気の秘密を知りたいからです。


僕には、あなたの魅力がまったくわかりません。


歌を歌うわけじゃないし、俳優でもないですよね。


もしこのハガキが読まれることがあったら、なぜ人気があるのかを、わかる範囲でいいので、答えてほしいと思います。』


ふーん。


人気の秘密ねえ。


この質問はあれだな。


いわゆる、「それがわかったら苦労しない」系の質問だな。


こういう疑問は、たとえ心に浮かんだとしても、言わない方がいいと思う。


口に出すと、相手にバカだと思われるぞ。


現にオレは、おまえのことをバカだと思ってる。


本当は、バカじゃないのかもしれない。


でも、それはオレにはわからないし、わかりたくもない。


わかる必要もない。


わからなきゃいけないのは、おまえの方だ。


自分が失礼なことを言ってると、わからなきゃいけない。


あなたの魅力がまったくわかりません、っていうのは、普通に悪口だ。


あなたには魅力がないと思いますって、丁寧に言ってるだけだ。


だろ?


だけど、おまえにはいいところもある。


おまえがオレのファンのふりをしてないことは、認めてやろう。


どこにも、クリス米村のファンだとは書いてないもんな。


その点は、ほめてやろう。


たが、いいか。


二度とオレの番組にハガキを送ってくるな。


オレのラジオも、二度と聞くな。


今すぐラジオを消せ。


ラジコで聴いてるなら、今すぐほかの番組にしろ。


おまえの口からオレの名前が出ないよう、いつも気をつけてろ。


それができるなら、おまえの住所を言わないでおいてやる。


さらしてやろうか、ええ?


オレの本物のファンが、おまえをボコボコにするぞ。


スタッフ、なんだよ?


え、聞こえない。


こいつにプレゼント?


ダメだ。


オレのネーム入りのマグカップは、こいつにはやらない。


ハガキは、こうしてやる!


気分直しに曲にいこう。


あー、ムカつく。


こんなときは、この曲だ。『面と向かったら、たいていのアンチはおとなしいらしい』」



↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

教訓👉怒ってる。笑




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ラジオ品川 99.92FM

Navigator クリス米村

『クリス米村のGO❗️GO❗️レインボー❗️〜今夜もパーリーしようぜ〜』

毎週木曜ほぼ21:30〜恋人たちが眠るまで


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