25 絶望への転落。救いの手は?
空高くを舞い上がる大量の紙。そこにプリントされていたのは、俺が沙恵と同じ布団で寝ている所を撮った写真であった。
屋上から俺を見下ろす光輝が見える。ここからでは遠くて分からないが、きっとアイツは笑っているだろう。
屋上には多くの視線が集まっていた。
そこで放たれた『紙』は、注目する生徒達の興味をより引き立てる。
一人。
誰かが舞い降りる紙を掴むために足を踏み出した。それをきっかけにして、多くの人々が動き出す。まるで札束が無造作に宙へばら撒かれたのを一心不乱で取るような、映画で見るあの光景がそこには広がっていた。
「ちょ……みんな!!」
耳を貸す者などいない。
俺の友達は、そこには一人もいない。
唯一の友達も今は生徒会室で仕事をこなしていることだろう。
全てが崩れ落ちる。
俺が必死になって築きあげてきた、ちっぽけな『日常』が。ただの紙切れによって木っ端微塵にされてしまう。
やがて、一人の生徒の手の中に。
それは収まった。
「これは……あの、加藤裕二とかってヤツだっけ!? この女の子が妹って書かれてあるぞ!?」
どうやら、ご丁寧に解説文を付け加えているらしい。故に情報の伝達は早かった。
「これ……本当なの? 妹とそういう関係なの……?」
近くにいた女子が、気持ち悪い虫でも見るかのような目で俺に問いかける。
「これは…………」
「いや、きも」
俺の言葉なんて求められていない。
この紙が宙を舞った時点で、結末は決まってしまった。
道の真ん中に立つ俺を避けるようにして人の流れが出来上がる。誰もが侮蔑の視線を俺に送る。
――――と、その時だった。
「裕二!? どういうことや!?」
「お兄ちゃん!!!!」
二つの声が。
俺を呼ぶ声が。
前後から同時に響き渡った。
それは、一種の宣告のようなものだった。
Ep 25.5 とある少年の妹は立ち上がりて。
とある少年の妹は。
とある家で、一人呟いていた。
「――――お兄ちゃんの、バカ……。ちょっとは私を頼ってくれてもいいのに」
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