17 妹が暴走しやがった

 俺は上手く妹を操り、一緒に買い物へ行くことになった。そして兄妹仲良く、イチャイチャしながらお菓子を選んでやろうと思ったのだが……。


 俺は重大なことを見落としていた。

 俺たち兄妹では、そんなことは実現しないのだ。なぜ気付かなかった。


 俺の妹、沙恵は。

 外に出るとヤンキーになってしまうのだ!!


 そう、月が出ると変貌を遂げてしまう狼男のように。沙恵は外気に触れるとヤンキー化してしまう!! (多少語弊あり)



 家から引っ張り出しておいて、「やっぱり来なくていい」 なんて言ったら、割とガチでキレられそうだったので、今更という訳にもいかず……。


 結局、ヤンキー化した沙恵を連れて店までやって来てしまった。

 まぁ、別にヤンキーが嫌というわけではないのだけれど……。


「おい兄貴、今日はここをさらうのか」


さらうってなんだよッッ!! ……マジでその言い方はやめろ! それじゃあヤンキーじゃなくて犯罪者になっちまうぞ!」


「んだとオラァ!? 舐めてんじゃねぇぞ!!」


「うん、とりあえずその無駄にデカいサングラス外してから威圧してよ」


「アァん!? ……クソ兄貴が!」


 この調子だと中々に不安である。


 ……周囲からの視線が痛い。

 そして何より、妹からの罵倒が痛い///


 そんなこんなでハラハラドキドキしながらお菓子コーナーへとやってきた。道中は割と静かに着いて来てくれたので助かった。(周囲にメンチ切りながらだが……)


 お菓子売り場には様々な種類のものがあった。昔ながらの古い店で売っていそうな小さな駄菓子から、最近の子が食べそうなポテトチップスまで。


「さて……沙恵はどれが良いと思う?」


「どのが一番気持ちよく、high↑になれるかってことか」


「そのボケは際どいからやめてくれ……」


「アァん!?」


「事ある毎にメンチ切ってくんのやめろや!!」


 そして沙恵は、とあるお菓子を手に持ち、「ウェーイ」 なんて言いながらカゴに入れてきた。そこにあるのは、いくつものグミ。


「……なんで、グミなんだ……?」


「アァん!? 手が汚れねぇからに決まってんだろ!! いちいち手に付いた油とか気になるようじゃ楽しめねぇだろうが!!」


「あ、ヤンキー状態でも結構優しいのね」


 そんなこんなで、手が汚れにくいお菓子を他にもいくつかチョイスして、俺達は店を後にした。沙恵は相変わらず周囲にメンチ切っていた。


「ねぇおに……、兄貴!!」


 こいつ今「お兄ちゃん」って言いそうになったか? うーん。沙恵も大変なんだな。その事には反応しないでおこう。ヤンキー状態の沙恵とあれこれ言い合ったせいで疲れたしな……。


「ん? どうかしたか、沙恵?」


「兄貴…………なぜ金を払ったんだ!?」


「お前は反社会的勢力か何かか!?」




 今回の件で、外出中の沙恵がどのように暮らしているのか。本当に不安になった。

 いちいちボケなのかガチなのか分からないから面倒くさい……。


 万が一のために、後でキッチリと叱っておこう。




「沙恵、いよいよ明日だな」


「兄貴自慢大会……か。兄貴は私だけの兄貴だ。だから明日はカマしてやれよ!」


「お、おう……ありがとな」


 ヤンキー化すると平然とこんな事を言ってのけるのか。我が妹、やっと手懐けられたと思っていたが、やはり恐ろしや……。


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