16 我が妹の手懐け方を覚えた!!
夏休みの真っ只中。
エアコンが効いた沙恵の部屋で、俺は説明を受けていた。
何の説明かって? 『兄貴自慢大会』とかいう訳の分からんイベントの説明だ……。
どうやら、沙恵が
俺は真剣に説明を聞いていた。
半ば強引に参加させられることになったのだが、今になって考えてみれば、これはチャンスなのだ。そう、俺がぼっちを回避するためのチャンス!!
学校では一人の親友を除いて友達が一人も居ない俺が、新たなる友情を育むためのチャンスなのだ!! 『兄貴自慢大会』にやってくる『兄貴』の中には同じ高校に通っているヤツもいるかもしれない。
何がなんでも友達にするッッ! あわよくば仲良くなって、俺の高校生活の春に青みを付けるのだ!(もう夏だが)
ということで、俺はかなり乗り気でいた。
「ってことで、お兄ちゃんにはお菓子の調達係を命じます!」
一通りの説明を受けた俺は、会の準備に取り掛かる。
「よしっ! 分かったよ。ところで、お前は何をするんだ?」
「私は……家でテレビを見ておく! お兄ちゃんはさっさと行くのだ!」
「……お前もなんか仕事しろよ!! お前が誘ってきたんだろうが!」
「だって面倒くさいし……ウニャウニャ――」
なんか小声で言ってるぞ……そんなに準備が嫌なのか!?
「お前も少しは手伝えよな」
「な、何をしたらいいのさ! お菓子以外準備すること無いじゃん」
確かにそうだ。部屋で遊ぶ以上、他に準備することはない。だがコイツが何も働かないのは腹が立つ……。大体、なぜ俺が真夏の炎天下の中、お菓子を買いに行かなくてはならないのだ。言い出しっぺは沙恵の方なのに。
「じゃあ……俺と一緒にお菓子選んでくれよ」
「むむん……外、出たくにゃい……」
やっぱりそれが理由かよ!? ってか何で語尾が『にゃい』なんだ!? またこの前みたいに可愛く振舞って言う通りにさせようとしているのか……?
頑なに外へ出ようとしない沙恵。
こうなったら、切り札を使うしかないか。
コイツが俺にデレデレなのは当然知っている!! 誘惑に耐えられないのは別に俺だけではないのだよ。沙恵だって同じだ!!
つまり……。
俺は間延びした声で、独り言にしては大きすぎる音量で呟いた。
「あーあー、二人っきりのお出かけだったのになー。悲しーなー」
言った瞬間、明らかに沙恵は片眉を上げた。小刻みに体が震えている。
(さぁ……外へ出るのか、出ないのか。どっちなんだ!!)
俺はトドメを刺した。
「じゃあ、俺……」
たっぷりと溜めてから、さながら爆弾を投下するように。
「――ひとりで、行ってこようかn」
「私もいきますっっ!!」
俺が言い終わるのも待たずに、割り込むようにして言ってきた。(思い通りッ! 思い通りッッ! 思い通りッッッッ!)
「そっかー。来るならそれでも良いんだけどね……」
俺は横目で沙恵を一瞥してから玄関へと向かう。後ろからドタバタと音がする。
きっと今、全力で外出の準備をしているのだろう。なんて可愛いんだ。兄とのお出かけに、そんな必死になってくれるなんて♪
ニヤニヤが止まらない。どうしても上がってしまう口角を抑えながら、靴を履く。
「お兄ちゃぁん! ちょっと待ってぇ!!」
こうして、俺は妹と二人で買い物へ行くことになった。
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