沙恵の友達編
3 ぼっち兄出現!
「昨日のテレビ、面白かったなー!」
「それなー! マジで爆笑したわ」
「……」
ぼっち下校です。一人二役です。笑えよ!
高校に入って、環境の変化に慣れずクラスに馴染めていなかった俺は、二年生になっても友達は少ないままだった。まぁ、友達がゼロではないだけマシなのだが。
唯一の友達は中学時代の親友だ。
学校ではいつも一緒だが、家は俺とは反対方向なので一緒には帰れない。
俺はこの孤独な下校時間が毎日憂鬱だった。
沈みかかった太陽に赤みがかった空。
青春っぽい風景だが、ぼっちだからか逆に悲しくなる。
一日の疲れがドッと溢れてくる感じだ。
背中を曲げて地面を見ながらトボトボ歩いていると、ふと聞き覚えのある声がした。
『紗恵先輩! すごいですね、尊敬します!』
『当たり前だろうが! ヤンキーとしての自覚を持ちやがれ!』
確かに聞き覚えのある声なのだが……。
俺は顔をしかめた。
ヤンキーモードの紗恵……か。
顔を上げると目の前には二人の女子が歩いていた。どちらも上下黒のジャージ。
黒ずくめの女……。背が縮む薬を飲まされそうな雰囲気がするぞ。
薬、中学生……ダメだ変な事を考えるな。
そこで、黒ずくめの女子二人は立ち止まった。
俺は驚いて咄嗟に電柱の影に隠れる。
なぜ隠れてしまったのか。他人からすれば女子中学生をストーカーするロリコンくそ野郎にしか見えない。
『紗恵先輩、頼み事があるんですけど聞いてくれますか?』
紗恵の【友達】は妙にうわずった声で問うた。うん、こちらも可愛い。
『どうしたの? 悩み事なら何でも言いなさい! 私はヤンキーとしてあなたの先輩よ?』
紗恵は無い胸を張って言う。
もう完全に調子に乗っていた。
てか【ヤンキーとして先輩】って何だよ、威張れることなのか?
甚だ疑問だ。
そこで、紗恵の【友達】は口を開いた。
『紗恵先輩の家、行ってもいいですか?
先輩のヤンキー心、色々と学ばさせていただきたいんです』
学ばさせていただきたい!?
一体、紗恵に何を期待しているのだろうか。もちろん、家での妹は超が付くほどデレデレなので、ヤンキー? のグッズなんて持っているわけがない。せいぜいあるとしたら短ランと、ボンタンぐらいだろうか。
恥ずかしがって紗恵もしばらく着ていないのだが……。
さて、【友達】から家に来たいと言われた沙恵は動揺しているようだ。
不良被れなのがバレるもんな! 人の布団に入ってくるから罰が当たったんだよ! ざまあみやがれ!
俺って最低だな。自覚はあるさ(キリッ)
明らかに目が泳ぎまくっている紗恵は言った。
『い……いいよ。次の日曜日に……来る?』
声震えてんじゃねぇか!!
お友達さんも「え? 悪いこと言った?」みたいな顔してるじゃん!
助けに行ってあげたかったが無闇に紗恵の前に出て【甘々モード】を起動させてしまうと大変なので迂闊に動けない。
結局、約束を交わしてしまった。
家には何もないのに。むしろ紗恵の部屋は可愛いのに。めっちゃピンクでうさぎのキャラクターで溢れているのに。
そうして家に帰ると案の定、紗恵が話しかけてきた。両方の人差し指を突き合わせて照れながら。今日も可愛いよ。
「お兄ちゃぁん......。話、聞いてくれる?」
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