2 妹の憧れ!

 俺の名前は加藤裕二。高校二年生だ。

 いや、こう言えば分かるか。


 つい今朝、妹と寝た男だ!!


 色々語弊が生まれそうだが、俺には一切の責任はない。なにせアイツが勝手に部屋に入ってきて布団に潜り込んだのだから。

 いくら美少女でもしてはいけないことはあるだろ!! ちょっと嬉しかったけどさ!


 そんな変態妹の名前は紗恵。

 中学二年生の美少女だ。

 どれくらい可愛いかというと、会話をしただけで心が奪われるほど。一目惚れというやつか。よく紗恵は言っていた。「いっつも周りから視線感じるんだよね〜。なんでだろう……」 お前が可愛すぎるからだろ。


 これだけ可愛いと彼氏が居てもおかしくないのだが、紗恵は恋愛経験ゼロであった。

 というか、告白すらされたことがないのである。おかしいよな。

 でも、これには明らかな理由がある。


 それが、玄関に立つ俺の目の前に映っていた。


「お前、相変わらずその格好かよ……」


 苦笑しながら言った。

 だってさ、超可愛いのにその格好はおかしいだろ……。


 茶髪に染めた髪に上下黒のジャージ、そしてうさぎのキャラクターが描かれてあるサンダル。

 とても学校へ行くような服装ではなかった。


「私服登校が許可されてるんだからいいの!!」


 そう、ムキになって言ってきた。

 頬はおろか耳まで真っ赤に染めて言い返してくる紗恵を苦笑いで受け止める。


「不良キャラとか、面倒くさいだけじゃねえの?」


「キャラとかじゃないし! 私はヤンキーに憧れてるの!」


 家ではヤンキーのヤの字もないくせにどの口が言うんだよ。


 それでも、必死に言い返してくる紗恵は本気だった。本当に不良に憧れているらしい。

 今に始まったことではないが、もっとマトモなものに憧れてほしかったものだ、と常々思っている。


 だがまぁ、妹のことにいちいち口出ししてもウザがられるだけなので、早々に引き下がった。


 と、そこでインターホンが鳴った。


「紗恵ちゃーーん。迎えに来たよー」


 友達登場だ!

 ドキリとした。今まで紗恵の友人は度々見たことがあるが、もれなく誰もが美人である。俺は、紗恵が美人発生装置だと本気で疑っていた。


 ――ま、まぁ? 妹の友達に興奮するような変態じゃねぇし? ドンと来いや!!


 何が「ドンと来いや」やねん。一人で突っ込んで虚しくなる。


「じゃあ、お兄ちゃん行ってくるね! バイバイ!」

 迎えが来たことにより、急いでドアを開ける。

 そこで一瞬、紗恵の【友達】と目があった。紗恵に負けず劣らず超可愛かったのだが、一つ気になることがあった。


 紗恵とまったく同じ服装……。

 仲良し同士でおそろ! とかやるのは分かるが、上下黒のジャージのお揃いなんて女子中学生のやることなのか、と疑問に思った。


「量産型ヤンキー……か?」


そんなことを考えているうちに、いつの間にか紗恵と【友達】は居なくなっていた。


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