第3話 可愛いカリン

「もう…。いい加減にしてよね」

 小さな頬をぷっくり膨らませ、カリンはぐっと僕を睨みつけた。


「お兄ちゃんがいろんな女の子に手を出しまくるせいで、あたしの友だち関係グチャグチャになっちゃったんだから!」


 僕のことを『お兄ちゃん』と呼んでいるが、カリンは別に妹ではない。

 ただの近所の幼馴染みだ。小さい頃からの付き合いで、実の兄のように慕ってくれている。


「ねぇ!聞いてるの?!」

 大きな瞳をくりくりさせ、声を荒げて睨みつける。

 …可愛らしくて仕方がなかった。


「うぅっ!やめて!頭撫でないでよ!」


 頭に載せた手を振り払われた僕は、渋々諦めて、彼女に視線を合わせてしゃがみ込む。


「ごめんごめん。カリンが可愛いから、ついつい昔の癖で頭撫でちゃったんだ、ごめんな」


 彼女は拗ねたようにうつむいて、じろっとこちらを睨んだ。ほんのり上気した白い肌が妙に艶かしい。


「…じゃあ、ギュウってしてくれたら許す…」


 両手を広げた彼女を抱きしめた。小さな柔らかい身体を飲み込むように。彼女の吐息が髪を揺らした。


 …彼女は僕の妹ではない。

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