第2話 甘美なアリス

「ねぇー。いつになったら、みんなに彼女だって紹介してくれるの?」


 白い煙をふぅーっと吹き出したアリスは、艶かしい唇を突き出して、不貞腐れた口調でボヤいた。粘ったるい彼女の声は色っぽくて好きなのだが、不満を言われるのは好きじゃない。


「悪い。もう少しかかりそうなんだ」

 彼女の綺麗なブロンドに染まった柔らかな髪を撫でながら、いつものように、生返事で誤魔化す。


「もう!!あなたが元カノとの関係をスッキリするまで待って欲しいって言って、半年経つのよ!」


「もうちょっと待ってくれよ。

 君のことが大切だから、きっちり片をつけておきたいんだ」

 彼女の瞳をじっと見つめて、優しく言い聞かせる。重い愛に潤んだ瞳が不快でも、僕は決して顔に出さない。

「…ありがとう。でも、私だってあなたのことが大好きなのよ。みんなに素敵な彼氏だって、自慢したいの」

 そういう彼女をゆっくり抱きしめて、不満げな口を唇で塞ぐ。


 そろそろこの子とも潮どきかもしれない。


 ふわふわの癖毛頭を撫で回しながら、彼女との関係に見切りをつけた。相性が良くてダラダラ続けてきたが、それほど思い入れがあるわけじゃない。

 甘い蜜を貪りつつも、次の獲物へ想いを馳せる。次はどんな子と遊ぼうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る