これは学園側の失態です!

 あ〜、酷い目にあった。


 まあ、いいや。これも全て普通に生きるため。


「おい、さっきデカい音が響いたろ?何か知らないか?」


「え?いや、知らないけど」


 実技テストが終わったら、広い部屋で待機ってことになっている。そこで、一番目の人に絡まれた。


「そうか」


 彼は俺に聞くだけ聞いて去って行った。


 それにしても、大きな音か。

 俺の魔法は、彼や彼の隣にいる魔法使いみたいな格好の女の子と同じくらいだったからな。

 たぶん違うな。



◆◇◆◇◆◇



「それでは、ステータス公開を行います。先程と同じ順で並んで下さい」


 おっと始まったか。


 ここで適正属性を少しいじらなければならない。


 しかし、俺は普通が分からないからな。

 見せてもらう。


(『ステータス鑑定、消費魔力500』)


 よし、これで前の人三人のステータスを確認する。


_______________________


マルコ・ブレイブ


人族


魔力:123698/133698


適正属性:〈光属性〉


スキル:《剣術》LEVEL6

_______________________


 なるほどな。


 光属性かあ。でも光属性持ってる人って少ないらしいからダメだな。


 次。


_______________________


エリザ・クライス


人族


魔力:290116/295116


適正属性:〈火属性〉〈水属性〉〈風属性〉〈土属

     性〉


スキル:

_______________________


 今度は光属性を持っていないタイプか。


 じゃ、次。


_______________________


アリス・アレシア


人族 聖女


魔力:237175/240175


適正属性:無属性〈神聖魔法〉LEVEL2 〈水属性〉


スキル:

_______________________

 

 おっ、この子が聖女だったのか。


 へ〜。


 参考になんねぇな。


 まあ、三人の無属性を省く属性数を足して三で割る。

 つまり適正属性の数の平均値を求めるわけだ。

 平均イコール普通。間違ってない。


 適正属性の数は二個か。

 オッケー。


(『ステータス偽造、消費魔力500』)


 よし、できた。これでいいだろう。


「次……フィン・トレード」


 おい、今の間なんだ?どうせさっきのことで内心笑ってんだろ?

 くそぅ。


「はい」


 俺は水晶に手をのせる。


 ざわっ。


「は?ど、どういうこと?」


 え?何?なんの反応?なんかヤバいことした?

 俺は上のスクリーンに映った、自分のステータスを見る。


_______________________


フィン・トレード


人族


魔力:354032/365032


適正属性:〈炎属性〉〈風属性〉


スキル:《剣術》LEVEL9

_______________________


 うん。別におかしいとこなんかはないけどな。


「あ、あの、炎属性って何ですか?」


 うん?炎属性……あ、炎?!あ、あヤバい。


 俺はとっさに手を離した。


(『ステータス偽造!消費魔力500!』)


「い、いや、俺も初めて見ました。バグじゃないですか?ほら」


_______________________


フィン・トレード


人族


魔力:353532/365032


適正属性:〈火属性〉〈風属性〉


スキル:《剣術》LEVEL9

_______________________


「あ、あれ?変わってる」


 試験官が困惑している。


「そ、それでは、失礼します!」


 俺は再びその場から逃げ出した。


「えっ?ま、待ちなさい!」


 試験官が俺に止まるよう言うが、俺は静止を振り切った。


 クソーッ、最後の最後でしくじったぁっ!



◆◇◆◇◆◇



「……何だったんだ?」


 フィンが走り去った後、会場は困惑に満ちていた。


「ほ、炎属性って何だよ?!」


「知らねぇよ!バグだろ、バグ!」


「でも、あの水晶がバグったなんて初めて聞いたぞ!」


「あの人ってさっきの凄い魔法使っていた人だよね。確か……火属性の」



「あ、あれってもしかして、火属性を極めた者が行ける領域?」


「そ、そんなわけないだろ?!だったら、二回目、変わった理由がねえよ!」


「あれは、バグとしても、他にも凄いのがあったよな」


「ああ、魔力多すぎだろ。魔導師候補のエリザ・クライスを超えてたよな?」


「それだけじゃねぇ。スキル《剣術》のレベルが9だったぞ」


「勇者候補のブレイブでさえ6だったぞ」


「フィン・トレード。アイツ何者なんだ?」


 気づかぬうちにどんどん、普通からかけ離れて行くフィンだった。



◆◇◆◇◆◇



「まあ、バグ以外は上手くいったからな。あまり気にしないでおこう」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る